自作小説の脇役令嬢に転生しました。そしたらなんとイケメンたちに好かれてしまって!?〜私、地味なのにどうして…〜
夏みかん
第1話 自作小説の脇役令嬢に転生しました
【男爵令嬢リリィ。幸せなハッピーエンドまであと…】
通称、ハピエン。
…と言ってもそう呼んでいるのは私だけなんだけれども。
前世日本人だった私はこのとき、転生や悪役令嬢、王族・貴族などのジャンルの小説を読んだりすることにハマっていた。
それらに触発され書いたのがハピエンだ。
完全オリジナルの小説で語彙力もなけりゃあ文才もない。ただの自己満足の小説。
ハピエンは大陸一の繁栄を誇るルーン帝国の中で諸侯の公子・公女達が通う学園を舞台としたストーリーだ。
主人公はタイトルにもある通り、タスメニア男爵家令嬢のリリィ。
熟したりんごのような真っ赤な髪に、輝く金色の瞳。背が低めの可憐な女の子。
そんな彼女が入学式でひとり迷っていたときに声を掛けたのが本作のメインヒーロー、ルーン帝国皇太子のエドワードだった。
そこから彼女と彼の交流が始まる。
最初は友人として仲良くしていたが、リリィと関わっていくうちに、彼女の優しさに惹かれていくようになる。
そして、彼女も少しずつエドワードのことを好きになっていく。
だが、2人には大きな問題があった。
そう、身分差だ。
貴族社会で最も重要視されるもの、それが家格だ。
上が公爵家からはじまり下は男爵家。
リリィは貴族の中では1番家格の低い男爵家、対してエドワードは帝国の皇太子。
それ故に2人の交際は幾度ともなく阻まれ、ときには身の危険も迫り大変な日々を過ごす。でもその出来事がこの2人の絆をさらに深くする。
令嬢たちからの嫌がらせ、エドワードの婚約者候補とされる高位貴族令嬢たちからの妬み嫉み。
それらを乗り越え最後には結ばれる。
それがハピエンのストーリだ。
登場人物は様々で、エドワード以外にも登場する。
エドワードの弟レオナルド、騎士団長のマクシミリアン、公爵令息ローランドなど。
彼ら全員がリリィのことを好きになる。
よく考えたらめちゃくちゃな設定だが完全なる自己満小説なのでそこは仕方がない。
…と、ハピエンの話はさておき。
なんと私はそのハピエンの世界に転生してしまった。
小説を書いている途中で車に轢かれてそのまま、だった。信号待ちの時に突っ込んで来られるとは思ってもみなかった。
思い出したのは6歳の時、招かれた皇城のお茶会で派手に転んで頭を打った時だった。
ここはハピエンの世界だということ、前世の私の最後について。
思い出してから私は思った。
『作者なのにリリィじゃない!!!!!』
…私は作者なのにも関わらず主人公に転生出来なかったのだ。
「誰…セレスティアって…」
肩をガックリ落とす。
今の私は名もない令嬢、セレスティア・ストフィールドに転生していた。
「まてまてまて、セレスティアなんて令嬢小説に登場させてないんだけど」
そう、私の小説の中にセレスティアは登場しない。ということはそれほど脇役の脇役モブのモブということだ。
ただ、一応貴族というカテゴリー中にはいるからそこは良しとした。
「でもなぁ…私は圧倒的地味令嬢なんだよなぁ…」
長い黒髪に青の瞳、それにメガネ。
華やかな容姿のリリィと比べて私は凄い地味だった。
転生するならもっと美人なキャラに…と一瞬思ったがそんなことを思っては大切に育ててくれている両親に失礼だ。そもそも目立っていいことなんてない。貴族社会だし。となんとか思い直した。
「ははは…今日も今日とて1人…」
私には友達がいない。
派手に転んで頭をぶつけても心配してくれるような人もいない。
ズキズキと痛む頭を押さえながら、前世について色々思い出していた。
そうしているうちに冷静になって来て、そして唐突にスマホがないことに退屈さを覚える。
「スマホがあれば永遠に引きこもってるのに…」
呼ばれたから仕方なく参加はしたもののお茶会には興味のかけらもない。
だから出来ることなら引き篭もっていたい…。
「はぁ…。貴族って面倒臭いなぁ」
気付いたら無意識に言葉に出ていた。
と、そんな時であった。
「僕もわかるよ。その気持ち」
突然隣から声がした。慌ててそちらに顔を向けるとそこにいたのは……。
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