始まりは死の淵から

僕はこれから


自殺する。


山川勇二郎。16歳。

2023年現在、高校1年生。


現在、とある自殺スポットに来ている。

なぜ死のうとしているか?

理由は単純、人間関係が上手くいかなかったからだ。


僕は今で言う"男の娘"で、そりゃあもう外見が女子高生そのものだ。

顔だけなら誰が見ても女にしか見えない。


今まではそれでも通用していたのだ。

中学までは。


だからいつもの調子で高校へ入学すると、初日から揶揄われるわ、冷やかされるわ、大変だった。


それでも何とか、数カ月間は持ち堪えていた。

噂や冷やかしを聞かぬふりをして。


しかし人間には誰しも限界というものがくる。

雰囲気に耐えきれなくなった僕は、高校生活を、人生を、この場で放棄しようとしている。


折角第1志望校にも受かったのにな…


受験生として勉強に励んでいた自分を思い出すと決断力が薄れる。


ええい、死ぬって決めたんだ、僕はここから飛び降りる!

じゃあな、僕の身体!


フェンスからぐっと身を乗り出したところで、強い力で何者かに肩を掴まれた。


「駄目だ」


えっ?


驚きが大きすぎて思ったことを声にできない。

混乱していると、また僕の肩を掴む人物に声を掛けられた。


「駄目だ。今はまだ死ぬべきときではない」


貴方は誰ですか。

なぜ僕を止めるのですか______


取り敢えず、一旦フェンスの内側に身を戻す。


「貴方は、一体…?」


やっとの事で肩から手が離され、その手の主の顔がはっきりと見えるようになった。


女子。恐らく自分と同い年くらいだろう。


「私か?ただのしがない女子高生さ」


しがない女子高生。

確かに見た目的にはどこにでも居そうな女子だ。


「えと…じゃあ、なぜ僕を止めたんです?」


1番気になっていた事を聞く。


お互い面識も無い他人だ、この人には僕を助ける理由なんてないはず。

ただの正義感か?


「特にこれと言った理由は無いさ。まだ若いのに命を落としてしまったら、来るはずだった未来が失われてしまうだろ?その瞬間を見たくなかったってだけ」


彼女はウインクを一つ落としてその場から去って行った。


最早、僕は唖然と見ているしかなかった。

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愛すことの何が悪い れもねーど @Saki008

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