中田原地区怪奇風聞集

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ひたひた

 

 ひたひた


 雨の日に夜遅く小学生が学校から帰るとき、誰かの気配を感じるらしい。気配を感じて後ろを振り向くと、誰も居ない。気のせいかと思っても、やはり気配を感じる。怖くなった小学生は大慌てで家に逃げ帰るのだ。可哀想に、恐ろしい経験をした小学生達は恐怖のあまり少し性格が変わってしまうそうだ。





 「大変!こんなに外暗かったんだ!?」

京子は叫んだ。クラブ活動で居残っていたらいつの間にやら夜の5時半だ。冬とはいえ昼の短さを舐めていた。

 「早く帰らないと叱られちゃう!」

京子は早足で歩き出した。

(…?)

道を歩くうちに、京子は気づいた。最初は疑っていたが、その疑いは次第に確信へと変わっていった。


誰かに見られている。


京子はそっと防犯ブザーに片手を構え、恐る恐る振り向いた。

誰も居ない。

誰かが隠れてみているの?

それとも私の妄想なの?


ヒタ…


「え?」

何かが聞こえた。


ヒタ…

ヒタ…


「なに?」


ヒタヒタヒタ…


「うぅ…」

京子はその場を立ち去りたい一心で走り始めた。


ヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタひたひたひたヒタひタひたひたヒタひタヒタヒたヒタヒた


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


京子は耳をふさいで家に向かって無我夢中になって走り出した。


ヒタヒタひたひたヒたヒタヒたヒタヒたヒタヒたヒタヒタひたひたヒヒタヒたヒタヒたヒたヒタヒたヒタヒたヒタヒたヒたヒタヒた


音は直接脳内に流れてくるかのように聞こえる。京子は音で割れそうな頭を掻きむしりながら走った。


ヒタヒたヒタヒたヒたヒタヒたヒタヒたヒタヒたヒたヒタヒたヒたヒタヒたヒタヒたヒタヒたヒタヒたヒタヒタひたひたひた…

ヒタ…

ヒタ…

……


…止まった?

良かった。

京子は安心で今にも泣き出しそうだった。


ピタ。

「あっ



「ただいま〜!」

「あら、京子。おかえり。遅かったじゃない。心配したのよ。」

「ごめんごめん。クラブ活動が長引いちゃって、さ。ほら!みてみてあたしの絵!」

「あら!上手じゃない!」

「でしょでしょ!」

……

……

……

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