ご霊界のドアの前
中筒ユリナ
第1話 始まりは病
俺のあだ名は『ばあや』だ。
これは、高校生から呼ばれていた。
友達の連中に『ばあや』と言われるのと、実際にこうして『ばあや』と書くとおかしな事に気が付く。
俺「『ばあや』って、なんか、乳母みたいで、ばあちゃんみたいなあだ名やな。」
なんて、言いながら笑ってしまう。
俺は性格的に暗いのは嫌で何か辛い事があっても、なんかそれに浸りたくなく。
常に明るく生きたい!
なんて無意識な感じ。
周りには恵まれ家族は勿論だが、友人にも恵まれた。
こんなラッキーなんだから、暗いわけはなく。
でも、めっちゃ堪えたのが、そう、
この病だ。
『癌』だった。なんの癌かは、伏せる。
最近は、『癌』だからって、不治の病ではなく、前向きに治療して元気に明るく生きている人は沢山いる。
俺も
「癌か・・・」なんて暗くはならず、
「よし!、、なんとかなる!」とまぁ、明るくいきたいところだった。
だが・・・そんな前向きで明るい俺に更なる仕打ちが待ち受ける!
神様って方がいたら言ってやりたい気分!
「ちょっと!、、俺の前向き、明るさをハンマーで壊さんといて!」
ほんとにそう言いたくなる。
医師からは、治療は無理だと。
つまりは、手の施しがないらしい。
「いや、ちょっと待ってや!」
って言うのが正直な気持ち。
でもな、、まだ死を想像せんもんでな。
「なんか、治療法があるやろ」
なんて、自分で探すねん。
今から考えたら、なんてアホなんやろうとな。
俺は、医師じゃないのにな、探すって、、無謀やろ。
でも、探す行動になるわけよ。
病院には通いな、先生の説明聞いて、病の治療と言うより、まぁ、なんだ、
痛みを和らげるとかさ、その時が、来るまでの支障が少しでも緩和ってやつが中心。
入院は勿論したしな。。。
そんで初めは明るかった俺の気力は段々と弱まり、でも周りにはなるべく明るいようにした。
特に家族には嫌な思いは少しでもさせたくなくて。
だって、一家の大黒柱がさ、こんな、50代前半でもう、あかん癌やなんてな、俺以上に辛いやろ。
それに、不安やろうし。。。
そんで、結局は最期らへんは自宅で過ごさせてもらった。
寝てるとな、いろいろと考える。
(俺、なんでこんな病になったんかな?)とかな。
本もいろいろと読んだで。
その癌に関わるような本もだけど、
なんか、道徳的な本とかな、、死を迎える際に読めそうな物かな。
精神を安定でもさせたかったんやろな。
かかりたくもなかった病、
まぁ、なりたくもないわな、皆。
そんなのになり、死にたくもないのに、その時が来るわけだ。
俺の人生って・・・なんても考えたしな。
友達は、励ましてくれたり、ホンマ有り難い。
家族にもこんな大黒柱でごめんやで。。
いろいろな気持ちが湧き上がる。。
最期まで俺は、家族と過ごして、
やっぱり幸せもんやったわ!
だから、覚悟もできた。
ある程度だけど。。
普通な感じでその時を迎えようと思った。
これは、俺だけが思ったこと。
でも、周りには明るく最期まで見せる!
暗くならずに!
そうして、俺は死んだ・・・
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