第8話 餌、奪い合い

 俺がドラゴンとして転生したのは、畜生道の世界。

 そこは、ただ貪り食らうだけの世界だった。



 俺が千尋峡谷に落とされて、数日が経った。

 この峡谷は、どこが果てなのか分からないほど、細長く続いていた。

 俺も1キロくらいは移動してみたが、それ以上は億劫だった。

 ここに居るドラゴンも、かなり多い。

 俺が行動した範囲だけでも、百匹くらいは居そうだ。


 峡谷を吹き抜ける風が魔素を帯びる。

 その魔素の淀みが、俺たちの餌となる子羊を産み出す。

 その産み出される場所は、その都度違った。

 一定以上の淀みに達したら、産まれるみたいだ。

 その魔素の流れが読める俺には、発生予定ポイントも分かる。

 近くに誰もいない時は、ありがたくちょうだいする。

 だけど他人がいる時は、あきらめた。


 で、今は俺の少し離れた所に、子羊が現れた。

 その場にいた三匹のドラゴンが、争いだした。


 しかも三匹は、子羊から目を離している。

 そして俺がいたのは、風下。


 俺は建物の廃墟跡に隠れながら、素早く近づく。


 俺と同じ様に、風上から近づいたヤツが、三匹にバレた。

 こいつが三匹に攻撃されてる隙に、俺は子羊を奪った。


 俺は建物跡に隠れながら、風下に逃げる。

 周囲に気を配り、近くに誰もいない事を確認する。

 そして、ある建物の廃墟に、くわえてた子羊を降ろす。


 ばさ。


 そんな俺の目の前に、ミーシャが着地。


「うふふ。」

 ミーシャは不敵に笑ってる。

 俺より、頭ふたつはでかいミーシャ。

 まともに戦ったら、俺に勝ち目はない。


「うまく逃げたみたいだけど、空からは丸見えなのよね。」

 ミーシャの瞳に、殺意が宿る。

「くそ。」

 俺は観念するしかない。


 千尋峡谷広しとは言え、空を飛べるのは、俺の知る限りミーシャだけだった。

 ミーシャひとりのために、頭上にまで気を配る訳にもいかなかった。

 その分、周囲に対する警戒が、疎かになる。


 俺は二歩ほど後ろにさがり、子羊を譲る。

 ミーシャはゆっくり歩み寄る。


「うふふ、よーく分かってるみたいね。」

 勝ち誇ったミーシャは、そのまま子羊にがっつく。


 俺はこの場から離れたかったが、出来なかった。


 子羊を盗まれた事に気づいたヤツらが、激しくケンカをはじめてる。

 俺がもう一歩後ろにさがると、そこは建物跡の外。

 ヤツらに見つかる。

 ヤツらは俺が盗んだものと、襲いかかってくるだろう。


 だから、子羊をがっつくミーシャの前から、離れられなかった。

「何?文句ある?」

 ミーシャも、いい気はしない。


「あ?黙っててくれ、気づかれるだろ。」

 俺は小声で注意する。

「は?」

 ミーシャは首をあげると、俺の後方を確認する。


「ふーん、あんた、弱いもんね。」

 ミーシャは、争いに巻き込まれたくない俺の気持ちを、理解してくれる。

 俺は弱いと言われ、カチンとくる。それは事実だが。


「まあ、いいわ。」

 ミーシャは翼をバサりと羽ばたかせる。

 ミーシャの身体が、宙に浮く。


 ミーシャの翼は、俺や他のドラゴンの翼と同じ物だ。

 これにどんな物理法則をかませたら、空を飛べるのだろうか。


 ミーシャはそのまま、争う集団に突っ込んで行き、集団をけちらす。

 けちらされた集団は、争うのをやめた。

 すでに争いの原因は、取り除かれている。


 俺は、ミーシャが残した子羊をついばむ。

 と言っても、ほとんど食い散らかした後だったが。


 がつ。

 いきなりミーシャが、俺の背中に着地する。

 そのまま俺は、うつ伏せにつぶされる。


「あら、勝手に食べるなんて、いい度胸ね。」

 ミーシャの言葉には、相変わらず殺意がこもる。


「わ、悪かったよ。」

 俺はとりあえず謝る。

「うふふ、まあいいわ。それくらいなら、恵んであげるわ。」

 ミーシャは俺を見下すのが嬉しいのか、今は機嫌が良さそうだ。


 俺はこの好機を逃さず、子羊を喰らい尽くす。

「ぺっぺ。」

 地べたの食べ物を食うと、地面の土まで口に入るのが、厄介だった。不快感極まりない。


「うふふ、いいとこ教えてあげるわ。ついてきて。」

 機嫌がいいミーシャは、口の中が不快そうな俺を見て、そのまま歩きだす。


 俺はミーシャの気が変わったら面倒なので、ミーシャの後を追った。




後書き

ども(・ω・)ノ

いやー、なかなか話しが進みませんね。かっこ笑い

私は一話三千文字を超えると、読み辛く感じます。

千文字ならサクサク。

なのでこの作品は、二千文字以内を心がけてます。


千文字なら毎日更新が必須でしょうが、二千文字だとどうでしょうか。

週二回でも、別にいいよね?

(´・ω・)

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