ドラゴン転生〜畜生道に堕ちても最強種なら何とかなる

あさぼらけ

転生前

第1話 不遇だった理由

 唐突とうとつだが、俺は死んでしまったらしい。



 いつてるかも分からない、やまいとのたたかい。

 やっと俺も、楽になれたのかな。と思いきや、なんか普通に苦しい。

 もしかして、死の直前ちょくぜんに味わった苦しみって、永遠とわに続くのか、これ。

 だとしたら、最悪さいあくだ!

 ほんと、俺の人生って、何だったんだ!


「いや、ほんと、すまんかった。」


 ん?

 誰かが俺に、話しかけてきたぞ。

 俺がそちらに目を向けると、なんかモヤモヤっとした感じのシルエットが見える。


「実はおまえのたましい宿やど肉体にくたいが、ほかたましいに取り違えられてしまっての。」

 モヤっとしたシルエットは、神さまか何かだろうか。

 だけど、神さまだとしても、シレッととんでもない事をほざきやがった。


「じゃあ、俺がやまいに苦しめられたのも、俺の肉体にくたい別人べつじんのモノだったからか?」

「その通りなのじゃ。」

「はあ?てめえ!俺はそいつの代わりに、苦しんだのかよ!俺の人生じんせいかえせよ!」


 俺は神さまらしきシルエットに、つかみかかる。

 が、出来なかった。

 俺の今の身体は、ゆらめく人魂ひとだま状態じょうたいだった。


「くそ!そいつをなぐらせろ!無理むりなら、おまえをなぐらせろ!」

 今の俺は、悪態あくたいをつく事しか出来ない。


「あやつは、天道てんどう罪人とがびとでの。人道じんどうとされるさい、おまえの肉体を奪ったのじゃ。ワシが気づくのが遅れて、おまえはあやつの肉体での人生を、余儀なくされた。ほんとにすまんかった。」


「くそ!そんな説明されても、俺は死んだんだろ!もう取り返しつかないだろ!」


 そう、俺の一生は、そいつのせいで無茶苦茶だったのだ。

 産まれた時から病弱で、入退院の繰り返し。

 学校にはロクに行けなかったが、本を読む時間は幾らでもあった。

 色々興味ある知識を身につけて、それを活かせる事を夢みていた。

 だけど最期の五年くらい、意識も飛びとびで、ほとんど動く事も出来なかった。


 それが、誰かのせいだったのか!

 神さまらしきジジイに、今さらそんな事言われても、俺の怒りの矛先は、どこに向ければいいんだ!


「だから、おまえの次の人生では、ワシがおまえの希望する肉体を、用意する事にした。それで許してもらえんだろか。」


「はあ?許すって、誰をだよ!」


 目の前のこいつか?それとも俺の肉体を奪ったというヤツか?

 そもそも、なぜ俺の肉体が奪われたのか。

 責任者出てこい!


 って、責任者こいつか?

 だからわざわざ、こんな事説明しにきたのか?

 別に、説明しなくていいだろ。

 世の中の理不尽な事に、いちいち弁明するつもりか?

 なんて殊勝なヤツなんだ。


「あやつは、天道の住人だったからの。人道の住人には覆せなかったのじゃよ。」

「なるほど。俺の肉体を奪ったヤツは、立場が上で、逆らえなかったのか。」

「平たく言えば、そうなるのじゃ。」


 天道と人道。

 おそらく六道輪廻ろくどうりんねってヤツだろう。

 第五道の人道より、第六道の天道の方が、上の世界だし。


「はあ。」

 俺は思っくそため息をつく。

 生前の俺は、幾度も医療施術の順番を抜かされている。

 この世には、産まれ持った階級と言うのが存在した。

 まさか産まれる前から、そんなのが存在したのか。

 人は、産まれながらに平等ではないのだ。


「で、今度の俺の人生は、ちっとは優遇そてくれるって訳ね。」


 神さまのジジイが言いたいのは、そういう事だろう。


「ま、まあ、少し違うが、そんなとこじゃの。今度のおまえの肉体。おまえの望むようにさせてくれ。」

「なら、今度は病いとは無縁な、強い肉体にしてくれよ。」

 俺は即答する。

 俺が五体満足だったら、どれほどまともな人生が送れた事か。


「そ、それは当然そうさせてくれ。」

「それと、もうひとつ!」


 神さまのジジイは、俺の当然の申し出で安堵したので、俺はたたみ込む。

 俺以外は普通に持ってた健康な肉体。

 こんな当然の権利だけで、済ませてたまるか。


「産まれる所は、当然裕福な上流階級にしてくれよな。」


 病いの心配のない身体と、不自由のない裕福な家庭。

 これだけは、最低限欲しい。


 もっと何か望んでも良さそうだが、生前が貧相だった俺には、これ以上の事が思いつかない。

 だが、これだけあれば、自分で人生を切り拓いていける。


「あ、ついでに今の記憶は、引き継がせてくれよな。」

 そう、強くてニューゲームを忘れるとこだったぜ。


 これで俺の次の人生は、バラ色だ。

 今生では楽しめなかった人生を、次の人生では謳歌おうか出来る。

 ワクワクするぜ。


 と思ってたら、神さまのジジイは、なんか表情が冴えない。


 ん?

 なんか俺、欲張りすぎたか?

 別にチート能力授けろって訳じゃないし、人として上級の部類の生活をさせろ、ってだけだぞ?

 って思ってたら、とんでもない事をほざきやがった。



「いや、おまえの次の転生先てんせいさき畜生道ちくしょうどうなのじゃが、裕福ゆうふく畜生ちくしょうって、どんなのかなって。」

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