洞窟に潜む骸骨

 あの夜を過ごし、俺達は村を出た。

 「まったく、嫌な夜だった」

 「そうですね。まさか罠だったとは」

 それからして、俺達はまた村を見つけた。

 「今度は罠じゃないといいが」

 俺達は恐る恐るその村に入る。

 「おう。また誰か来たのか?」

 「うわっ!」

 「いつの間に後ろに!?」

 俺達の後ろには老人がいた。

 「あぁ、すまない。驚かせてしもたな。ワシはこの村の村長、ヒロキ・カイニドじゃ」

 「ど、どうも、勇者のモーガン・ヨシネムです」

 「僕は魔法使いのトロイト・シウバです」

 「あぁ、君たちか噂の」

 「噂?」

 「この村から数キロ離れた所にカシーノ村があってな、数ヶ月前に怪物が人間を追っ払って根城にしていたんだ。男は殺され、女子供はあそこの洞窟に閉じ込められておる」

 「そんな下劣な」

 「だが、あのカシーノ村にいる怪物達をお前達が倒してくれたと聞いてな。本当にありがたい」

 「いえいえ、俺達は襲われたから倒したのであって…」

 「だが、あの村にいた女子供はまだ洞窟にいるままじゃ。どうか、勇者様、彼らを救ってくれないか!」

 俺はその言葉に心を揺さぶられ、返答した。

 「分かりました。では、この勇者モーガン!人々を救って見せましょう!」

 「おぉ!ありがたい!」

 「その前に、この村には防具を売っていたり素材を加工してくれる所はあるか?」

 「あぁ、あるぞ、着いてこい」

 俺達はカイニドに着いていき、とある店に入る。

 「レイジ、いるかの?」

 「ん、カイニドさん、どうしましたか?」

 店の中にいたのは、中年の男。

 「この人は武器屋のレイジ・ダノ。武器を加工したりしてくれる人じゃ」

 「よろしく」

 俺はレイジに短剣を出した。

 「じゃあ、これも加工が出来るのか?」

 「あぁ。出来るぞ。金はかかるがな」

 「OK」

 俺は持っていたゴールドを出し、短剣を加工してもらった。

 「終わったぞ」

 レイジが加工後の短剣を出す。短剣の刃の部分は唐紅に光っていた。

 「これは…」

 「これは金属同士が擦れ合うと火花が出る仕組みになっている。そのためにもう一本出そう」

 そして、レイジがダガーナイフを出した。

 「これは」

 「コイツはかつて勇者のお供であった暗殺者アサシン、ジェシー・ジョウクが使っていたダガーナイフのレプリカだ」

 「ジェシー・ジョウクねぇ…」

 ジェシー・ジョウク。言い換えると九条くじょうジェシー。俺はその名に聞き覚えがあった。

 九条は俺がかつていた殺し屋組織『ジェミー』のレジェンドだ。

 殺害人数は百を越え、今のボス、ウィリアム・ヨークや俺の様な殺し屋の師である。

 しかし、九条はとある議員の暗殺をこなそうとした際に、ターゲットである議員にバレてしまい、不慮の事故という名目で殺されてしまった。

 俺はそんな事を思い出しつつ、俺はそのダガーナイフを手に取る。

 「さて、洞窟にいる奴らを倒し、そこにいる人たちを解放してきましょう!」

 「では、よろしく頼んだ」

 そして、俺達は南東にある洞窟に向かう。

 洞窟の前には二体のゴブリン。よくある門番なのだろうか。

 「じゃあ、早速この唐紅の短剣を使いますか」

 俺とトロイトはゴブリンの前に立つ。

 「なんだぁ?人間かぁ?」

 「俺は勇者モーガン。中にいる人間達を解放しに来た」

 「けっ、解放だぁ?なら殺してやるよぉ!」

 ゴブリン達は鉄棒を取り出す。

 「丁度いい。かかってきな」

 「舐めるなぁ!」

 奴は鉄棒を突き刺そうとする。

 「はぁ!」

 「おっと、見える」

 俺はその攻撃を簡単に避ける。

 「ちぃ!」

 奴はまたも同じ攻撃を仕掛ける。

 「単調だ」

 俺は短剣を鉄棒に掠らせ、火花を出す。

 「なっ、火花だと!」

 そして、一瞬の隙にその火花を奴の目に近付ける。

 「ギャハッ!」

 それにより奴の目は見えなくなった。

 「隙ありだ」

 俺は奴をダガーナイフを使い、袈裟切りで倒した。

 「かばはあっ!」

 奴は消えた。

 「よし、倒したぞ」

 「はい。こっちも」

 どうやらトロイトもゴブリンを倒したようだ。

 「じゃあ、入りますか」

 俺達は洞窟に入る。

 洞窟の中は暗く、湿っぽかった。

 「暗いねぇ。火花を散らすか。トロイト、木の棒は」

 「あります」

 俺は短剣でダガーナイフを擦り、火花を出す。

 そして、先ほど拾った木の棒に火花を当て、火をつける。

 暗かった洞窟内が少しだけだが明るくなり、暖かくなった。

 「よし、これで歩きやすくなった」

 だが、洞窟内を歩いていてもモンスターと出くわさない。

 「モンスターの野郎。全然身を出さねぇな」

 「もしかしたら、奇襲の可能性もありますね」

 すると、後ろから何かが歩く音がした。

 「なんだぁ?」

 俺は後ろを振り向く。そこには骨のみのモンスターがいた。

 「オイオイ、なんだコイツは」

 「コイツはスケルトンです!」

 「ケケケ!いるのは俺だけじゃないぞ!」

 すると、洞窟内が唐突に明るくなる。何とそこには数十体ものスケルトンがいやがった。

 「ちっ!」

 俺達は武器を構える。

 「やい!かかれ!」

 後ろのスケルトンらがこちらに突撃する。

 「けっ。二刀流を舐めるなよ」

 最初に短刀を持ったスケルトンが切りかかる。

 「はっ!」

 「切らせるか!」

 俺はダガーナイフでその猛攻を防ぎ、短剣で体を一閃する。

 「ぎゃあ!」

 次に後ろからスケルトンが襲いかかる。

 「うらぁぁ!」

 「させるかよ」

 俺は後ろを振り向き、逆手持ちの短剣でまたも一閃した。

 「くはぁ!」

 「ちぃ…俺の部下をぉ!」

 リーダーらしきスケルトンが感情のままに突撃してくる。

 「死んどけぇ!」

 しかし、その攻撃は俺を当てるに至らなかった。

 「ストームアタック!」

 唐突に吹いてきた風が、ソイツをバラバラにした。

 「すまんなトロイト」

 「いいえ、危なかったんで」

 そして、スケルトン軍団は全員倒した。

 「さて、人間はどこに」

 「よくも我の部下を殺ってくれたな」

 「なんだ?」

 俺達は後ろを振り向く。そこには、2メートルもありそうなスケルトンがいた。

 「テメー、人間はどこにいる?」

 「ククク。それは我を倒したら言ってやろう」

 そして、スケルトンが叫ぶ。

 「我の名はシュウボン。『豪冷武ゴーレム隊』の隊長であり、又の名を『骨の拳法家』よ」

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