第39話ひめたる思い
一旦白い液体を取り終えた俺達3人。
スコリーはチビだったおかげで、俺の上着だけで体全身を隠す事に成功し、エリス様は俺のシャツを腰に巻きどうにか下半身を隠し、胸周りは溶けていなかった自分の制服を胸の周りに巻きつけ一応は何とかなった。
そして残った俺は上半身裸で、スコリーのリュックも溶けて無くなった為、中に入っていた荷物を俺が両手で持っている状態となっていた。
「それじゃあ帰るか……」
「ですね」
「疲れたんだよ!」
そうして俺達はその後魔物に会う事無くダンジョンを脱出する事に成功した。
そしてその後は前もって呼んでいた帰宅用の馬車(スコリーはエリス様と同じ馬車)に乗り、そのまま解散という運びとなった。
にしても、まさかあんな場所に伝説の服を溶かすスライムが居たとはな、本来なら嬉し恥ずかしの神イベントだったんだけど、流石に直前に命の危機に陥っていた状況だと、全然嬉しくなかった……と言うよりかは逆に鬱陶しかったまである。
けど、また今度何かに使えるかもしれないし、後で家臣の何人か連れて回収しに行くか。
ダンジョン攻略自体は疲れたものの、そのおまけとして全男子の夢のアイテム服だけ溶かすスライムを見つけられた事によって、アクト的には今回のダンジョン攻略はプラスで終える事が出来た。
――――
アクトと別れたエリスとスコリーは、ボロボロの服装のまま馬車へと乗り込んだ。
「疲れたんだね……」
「お疲れ様ですね。スコリー様」
そう言ってエリスに頭を撫でられたスコリーは勢いエリス土下座した。
「申し訳無かったんだね!」
「え?え?どうかしたのスコリー様?」
「今回僕の不注意で王女様をあんなにも危険な目に合わせたんだよ。そ、それにお召し物もボロボロにしちゃったんだね……」
そう謝ったスコリーの体は怯えからなのか少し震えていた。
「なるほどその事ですか……」
「っ」
「そんなに謝らなくても大丈夫ですよスコリー様?」
「ど、どうしてだね!ぼ、僕王女様を危険な目に……」
「その事ですけど、私はそこまで危険な目には合って居ませんよ」
「どういう事だね?」
そうしてようやく顔を上げたスコリーの顔を見て、エリスはニコリと微笑みかけ話し始めた。
「それはですね、あの場所にはアクト様が居たので大丈夫何です。」
「ほ、本当ににどういう事だね?」
「あまり詳しい事は言えないんですが、私今は王女様なんて呼ばれてますが、実は昔はそんな風に呼ばれなかったんです。今は仲が良いんですけど、昔はキール様やアイリス様共全然仲良く無く、いつも死にたくて死にたくてしょうが無かったんです。」
「…………」
「そんなある日、私がキール様に手を上げられそうになったあの時に、アクト様は現れたんです。それからは本当に凄かったんですよ?昔はちょっと性格の悪かったキール様がアクト様と関わっただけで今の男らしい正々堂々とした性格に早変わりして、長年私にかけられた誤解をあっという間に解いても下さったんです。」
その後もエリスの口からいかにアクトが凄いかと言う事を話されたスコリーは思った。
そしてそれが無意識のうちに口からこぼれ落ちていた。
「もしかしてエリス様ってアクト様の事が好きなんだね?」
瞬間エリス様の顔は真っ赤になり、顔からはボンっと湯気が出た。
そして少し誤魔化すような手振りをして、エリスは一瞬悲しげな表情をした。
スコリー=ロイドはまだ10歳だ。
だがその一方で周りからは天才天才と評される程の頭脳を持っている。
だからこそエリスのその悲しげな表情の正体もすぐにわかった。
アクト=ホワイトには、ユウリ=エインズワースという婚約者が居る。
だからエリスは自分の思いを表に出す事は出来ないのだ。
そんな事わかっている。
だが、スコリー=ロイドは周りから天才天才と評される程の頭脳を持っている一方で、まだ経ったの10歳の少女である。
理屈で分かっていたとしても、それよりも自分の感情を優先するのは当たり前である。
「決めたんだね!僕はエリス様の恋の手伝いをしてあげるんだね!」
「ちょ、ちょっと何言ってるのですかスコリー様!」
「大丈夫だね!エリス様はユウリ様に負けない程かわいいから、アクト様なんてイチコロなんだね!それにいざとなったら王女様のパワーで重婚でも何でもやっちゃえばいいんだよ!」
「で、でも……」
「エリス様!僕はまだ10歳だけどそれでもわかるんだね!自分の心に嘘を付くのはよく無い事だね!」
「ありがとうスコリー様」
「なら!」
「その考えはわたしもその通りだと思うの。でもごめんね私も普通の女の子なら無理だと分かっていても、スコリー様の言うようにアクト様に自分の思いを伝えると思う。だけど私はお姫様だから……そんな事願っちゃうと本当に叶っちゃうからダメなんだよ。だからスコリー様には悪いけど、私はこの気持ちをアクト様には伝えることが出来ないの」
そう言って微笑むエリスの笑顔は悲しげで、それでいて王女としての覚悟の顔をしていた。
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