第9話体重
「なぁシャロ……」
「はいお兄様?」
「これどうすればいいと思う?」
「さぁ?放置でいいんじゃ無いの?」
「いや、絶対ダメだろ!」
そう俺とシャロが話す先には、先程俺がほぼ一方的にボコボコにして現在気絶中の、トワイライト王国第一王子のキール=トワイライトが大の字で伸びていた。
そんな不敬罪で首を切り飛ばされそうな事が何故起きたのかは少し前に遡る。
――――
俺がエインズワース家で気を失ってから1ヶ月、始めの頃は俺が気まず過ぎてユウリを避けていたのだが、うちとエインズワース領との間は結構な距離があるのにも関わらず、週に一度はユウリがうちに来ては色んな魔法を見せてくれているうちに仲良くなり、それで父上が俺とユウリが仲良くなった事を確認すると、婚約した事を国王様に伝えに王都に行くことになった。
「私王都って来るの初めてですわ。アクト様は確か何度か来た事があるのですよね?王都とは一体どんな所なんですか?」
「うーんそうだな、とは言っても俺も王都には数回来ただけだから詳しい事は分かんないけど、アレだねご飯はめちゃくちゃ美味しかったね」
「そうなんですね」
「お兄様!お兄様!」
「ん?どうかしたか?シャロ」
「シャロあそこ行きたい!」
「ああ、あの前来た時に行ったアイスクリーム屋か?」
「うん!」
左手にはシャーロット右手にはユウリという、両手に花の状態で馬車が王都内を進むのだが、この2人は俺的には将来的には義理とはいえ姉妹になるのだから出来れば仲良くして欲しいのだが、残念な事に2人はあまり相性が良くなかったのか、よくうちに来ては今の様に俺を間に入れて、表立って悪口は言わないがバチバチと目線だけでよく争っている。
それよりも今の問題は……
「狭い!」
本来なら2人乗りの席が2つあり、合計で4人が乗れる様な構造になっているのだが、何故か今俺達は2人乗りの席に3人で乗っており、子供だからギリギリ乗れているが正直狭い。
何度か狭く感じた俺がもう一つの席に移動したのだが、その度2人も移動して来て結局狭く、我慢の限界に達した俺はついつい本音を話してしまった。
この発言が戦闘開始のゴングとは知らずに……
「ですってシャーロット様。大好きなお兄様があなたがそこに座っているから、狭く感じているらしいわよ?」
「えー?そんな事ないと思いますよ?だって前来た時はシャロお兄様と一緒に座ったけど、そんな事なかったもん!ユウリちゃんのお尻がでかいんじゃないの?ね?お兄様!」
「え?いや……」
「ほら、アクト様は違うって言ってますわよ?あ、分かりましたわ!そんなこと聞くという事はもしかしてシャーロット様最近お太りになりませんでしたか?そう言えば最近は私が持ってくるお菓子を1人でばくばくとお食べになっておりましたもんね」
「そんな事ないもーん!シャロ、ユウリちゃんとは違って太らない体質だもーん」
「なっ!?」
「「お兄様(アクト様)!どっちが太りましたか?」」
いきなり目の前でよく分からない争い事が始まり、その内容が太っただの太って無いだのと言う、男子がその手の話題を話した瞬間、例えそれがどれ程の顔面偏差値の持ち主でも、その株を地の底へと落としてしまう話題になった為、絶対に話に混ざりたく無いと思い2人の真ん中で出来るだけ気配を消していたのだが、本当に残念な事に1番最悪な所で話を振られてしまった。
正直別にそんなマジマジと確認とかしたことも無いし、太ったかどうかとか全然分かんないし、俺の目からは2人とも痩せてる様な風に見えるけど、前世でクラスの陽キャくんが同じ質問をされた時に、痩せてると答えた所実際は少し太ったらしく、その回答を間違えた翌日には、陽キャグループを追放されて俺達陰キャグループにランクダウンして、その一部始終を見ていた俺含めた陰キャ達で、あれは流石に可哀想だとそいつを励ました過去がある。
それ程までに女子の体重関連の話題はタブーが多い……
「あ、えーっと…………」
解答に困り再度2人の腰回りを見比べるが、シャーロットは体にほとんど無駄な脂肪が無く子供ながらに、前世であればモデルになれるポテンシャルを持っているし、ユウリはシャーロットに比べたら少し肉は付いているが、それが太っているかと言われたら全然そんな事は無いし、何ならその歳にしては大きな胸のお陰で相対的には痩せて見えるほどだ。
つまり結論2人とも普通に痩せていると思う。
「そ、そうだなこの中だと……」
「…………」
「…………」
「1番太ってるのは俺かな?いや〜実は最近ちょっと食べ過ぎてな」
そう言いながら俺はハハハと笑い、立ち上がると2人に対面する席へと1人腰を下ろした。
さて、この解答は正解か?
俺はそれを確認するために薄らと目を開いた。
「お兄様は全然太ってません!どっちらかって言うとよく筋肉とか引き締まって良い体です!」
「そ、そうですよアクト様。前にチラッと見えた時も腹筋も割れてたし、私も……良い体つきだと思います」
「お、おう……ありがとう」
正直12歳と11歳に何を言わせてんだとは思ったが、何とか俺は正解の解答を導き出せたらしい。
そうホッと息を吐いたところに再度爆弾は落とされた。
「「それで?お兄様(アクト様)はどちらの方が太っていると思いますか?」」
2人の手によって無慈悲にもround2が始まった。
2人とも勘弁してくれぇぇぇ!!!
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