第6話ユウリ=エインズワース

「あ、えっとそう言えば、ユウリさんが俺と話したいっていう内容って何ですか?」


俺がそう聞くと、今まで少し照れているのか顔が少し赤らんでいたユウリの顔が一瞬で暗くなった。


「どうしてアクト様は、あんなにも魔法に一生懸命になれるのですか?」

「…………はぁ」


ユウリの顔が暗くなり、一体どんな重い話が来るのかと身構えていたら、なんか思ってた感じと違う話が出て来た。


「いやどうしてって、普通に面白いからだけど?」

「面白い?」

「そうそう、だって魔法って何でもできるじゃん!俺は生まれ付き魔力が少なくて、そこまで自由自在とは言えないけど、それでも大抵の事は練習していけば出来様になるんだよ?こんなにもワクワクする事なんて他になくない?」


そう俺が魔法の良さを熱弁すると、それを聞いていたユウリはしっかりと話を聞いていたのか、ボケーっとしていた。


「まぁその辺はお義父さんにでも聞いてみたら?あの人なら多分俺以上にそう言うの詳しいんじゃないかな?じゃないと王国随一の魔法の使い手なんて呼ばれないでしょ」

「そうなのかな?」

「多分ね。まぁでもそんなに深く考え無くて良いんじゃない?それとも過去になんかあったの?」

「ッ!?」


そう何気無く俺が言った瞬間、ユウリの顔付きが一瞬強張るのがわかった。


はい!俺やっちゃった!

これアレだよこの反応からして絶対過去になんかあったやつだよ!

俺今日だけで何回地雷を踏み抜いてんだよ!

本当どうすんのこれ?

俺もうこれ以上喋んない方が良いんじゃない?

喋れば喋るほどドンドン好感度の下がる音が聞こえてくるよ?


「もし過去に何かあってもそんなに気にしなくて良いと思うぞ?俺だって昔魔法を使いたくって、父上が国王様から預かっていた魔道具を勝手に使って、屋敷の一部丸々全部吹き飛ばした事もあったけど、ちゃんと国王様と父上に頭下げて許してもらったから、それ以降は全然気にしてないし」

「………………」


ほーら見たことか!

ユウリさん黙っちゃったよ!

これ俺の中では滑らない話だったんだけどな……


「あ!そうだ、俺温泉入ってくるねー」


結局部屋の空気に耐えきれなかった俺は、大量に出て来た嫌な汗を流す為にも温泉へと向かった。


――――――


私は魔法が嫌いだ。

私のお父様は王国随一の魔法の使い手で、その娘でもある私はお父様の遺伝子を濃く受け継ぎ、本来ならば12歳になってからようやく魔法が使える様になるのだが、私は7歳の時から魔法が使えた。


それを見たお父様は私を天才と持て囃し、それをお母様が軽く嗜めていた。


だがその頃の私はお父様の言う事を間に受け、自分は本当に天才だと思い込み天狗になっていた。


そんな天狗になっていた私にも昔、名前は知らないが1人の友達が居た。

その友達はとても物知りで、色んな私の知らない魔法の知識を持っていて、よく2人で魔法について話し合っていた。


そんなある日、私はその友人と一緒に考えた魔法を2人で近くにある広場に夜中こっそり家を抜け出して、親には黙って新作魔法を使った。


だがそれは失敗に終わった。


本来ならば生み出した魔法の種が天高く打ち上がったのと同時に、空には炎の花が咲き誇るはずだったのだが、それは空の上では咲き誇る事はなく、地面に落ちたと同時にその周囲を火の海へと変えてしまった。


その際に、その友達が私を庇って左腕に火が飛び移り火傷を負ってしまい、その火災はお父様が火事に気がつきその周囲一帯に雨を降らせた事で鎮火に成功したが、それ以降その友達とは会えなくなってしまった。


その火災についてお父様にめちゃくちゃ叱られたが、私はそれ以上に唯一の友人に怪我を負わせてしまった事に恐怖を覚え、それ以降魔法を使おうとするとその時の事を思い出して私は魔法が使えなくなり、それと同時に私は魔法を嫌いになった。


それから5年が経ち、私はその名前の知らない友達と同じ様に、魔法に真摯にそして無邪気に向き合う同年代の少年と出会った。

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