山姥の住む山
これは、かつて友人だったAさんが小学生の時、実際に体験したお話。
Aさんは小学生の頃、団地に住んでいた。
Aさんの住んでいる団地には、同じ学年の男の子がAさんを除いて六人居た。
ある日、Aさんの友達が近所にある山に山姥の住む小屋があったと話した。
その話を聞いたAさんは普段から一緒に遊んでいる団地の男友達数名と、その日の放課後に山姥の住むと言われている山に向かった。
山姥の住む山は、Aさんの住む団地から自転車で五分程度の場所にあった。
石で作られた階段から入れる、田舎によくある山だった。
石階段の入り口はあるが、人通りが無いため舗装されていない山道をAさん達は上った。
上る事十五分程で、上の方に小さな小屋が見えて来た。
あれが山姥の住む小屋だと分かったが、近づいてみると、その小屋は窓ガラスが割れており、屋根も半壊していて見るからに人が住んでいるような小屋では無かった。
小屋の周囲は少し開けていたが、当然人が居る訳も無かった。
Aさん達は小学生の発想から、山姥が帰ってくるまで小屋の前で待とうという話になった。
当時流行っていた携帯ゲーム機で時間を潰していたAさん達だったが、山姥どころか人一人訪れる事は無く、暗くなって山が下りられなくなる前に帰ろうという話になった。
帰宅後、Aさんはゲーム機が鞄の中に入っていない事に気が付いた。
既に日が沈んでいた為、明日またAさんは山姥の住む山に行くことにした。
翌日、Aさんは一人で山を登ってゲーム機を探した。
もしかしたら、道の途中に落としているのかもしれないと思い、くまなく山道を探したがゲーム機は見つからなかった。
やがて、Aさんは昨日見つけた小屋に辿り着いたが、誰かが小屋の前に居るのが見えた。
もしかしたら山姥かもしれない。
そう思ったAさんは、茂みに身を隠した。
子共ながらに気配を隠しながら小屋を見ると、小屋の前に居るのは女性だと分かった。
山姥と呼ぶには、あまりに小奇麗な恰好をしていた女性にAさんは少し安堵したが、それが間違いだったとすぐに気が付いた。
何故なら、その女性は手に包丁を持っていたからだ。
ゲーム機を諦めたAさんは、女性に見つかる前に急いで山を下りた。
その後、しばらくしてAさんは再び山姥の住む山に居た女性に出会った。
その女性はAさんと同じ団地、四件隣に住んでいた女性だったのだと言う。
その出来事以来、Aさんは友人に誘われても山姥の住む山に行くことはしなかったと言う。
何故、女性が包丁を持って山の中に居たのか、それはAさんにも分からないと言う。
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