高校時代

ゆう

高校時代へ

“You’re off to great places. Today is your first day! Your mountain is waiting, so get on your way!” – Dr. Seuss(素晴らしき未知の世界へ旅たつ時が来た。今日がその日だ。立ちはだかる高山を征するのは君だ、さぁ、出発しよう!)


 高校入学時に担任の教員が生徒に贈った言葉は、自分には刺さらなかった。多くの同級生の色素は、丸で西海岸の眩しい太陽光を浴びた世界のように輝く中、その影に身を潜めながら荒れた生活を送り、何となく過ぎた高校時代。二度と戻る事のないその時期を、初めて意識したのは自分自身が高校教員になってからだった。大人がもし大人になれるとしたら、自分の成功体験を子供や他者に語る事ではなく、自分の大きな失敗を曝け出し、二の舞を踏ませないように自分なりの後悔を伝える事を通して成長する事でしか、なし得ないのかもしれない。そう思うのは、自分が後悔だらけの人生を送って来て、成功体験などないに等しいからかもしれないが、まだ何処かで密かに願っている証でもあるのだろう。山に足を踏み込むことから逃げた自分を、生徒達と向き合うことで共に一歩、何かに何処かに踏み込み歩き出す日が来る事を…。

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