第4話 ロバート・ル・ヴァクト
ロベールの家に行った次の日、2学期の中間試験の結果発表があった。
ヘイズ王立魔法学園の試験は、筆記試験と魔術試験だ。その合計得点が中間試験の結果として順位が発表される。
私が結果発表の掲載された掲示板の前に行くと、そこには人だかりができていた。
――今回こそは1位をとれるはず!
私は自信満々で掲載された順位を見た。
“1位 ロバート・ル・ヴァクト 998点”
“2位 マーガレット・マックスウェル・ウィリアムズ 997点”
――えっっ2位?
筆記試験も魔術試験もほぼ満点だったから、今回こそ1位だと思っていた。
それなのに、1位はロバート・ル・ヴァクト。
私は合計得点で1点負けている。
私はロバートのことを知らない。同級生からは貧乏男爵家の出身だと聞いているのだが、公爵令嬢の私が貧乏貴族に負ける訳にはいかない。
それにしても、ロバートって、どこかで聞いたことがあるような名前……
悔しいから順位表を燃やしてやろうかと考えていると、後ろの方から声がした。
「マーガレット様!」
振り向くと昨日の青年がいた。
「あら、昨日はどうも」
「また、火属性魔法を使おうとしましたよね?」
「えっ? 何のことかしら?」
また私が火属性魔法を使おうとしたことに気付いたようだ。
「こんな場所で火属性魔法を使うなんて、何かあったのですか?」
「周りの人に被害が無い程度に、あの順位表を燃やしてやろうと思っただけよ……」
私がそう言ったら、青年は順位表を見た。
「あ、また僕の勝ちですね。2連勝できると思っていませんでした」
「え? あなたがロバート・ル・ヴァクト?」
「そうですよ。昨日自己紹介したはずですが……」
「だって、あなたはロベールよね?」
「ええ。よく間違われますけど、私の名前(Robert)の読み方はロバートではなくロベールです」
私の前にいるのは、私と学年1位を争う男。
約1年半の間、ロバートだと思っていたけど、本当はロベールと言うらしい……
眼鏡を掛けた地味な男。だけど、眼鏡をとるとちょっとイケメン。
栗色の毛は柔らかく、人懐っこい雰囲気。
「あ、あなたがロバート、いえ、ロベールだったのね。中間試験はちょっと失敗しただけ。期末試験は私が勝つから」
「じゃあ、勝負といきましょう」
「望むところよ!」
私とロベールが話をしていると騒がしい集団が近づいてきた。
多分あいつだ。
「マーガレット、また2位だったのか……。まあ、おめでとう!」
女子に囲まれてやってきたのは私の婚約者、ハーバート・バロン・ハリスだ。
婚約者といっても親が勝手に決めただけで、私はハーバードの事が好きではない。
ハーバートのハリス侯爵家は、ウィリアムズ公爵家の派閥に属している一侯爵家に過ぎない。それなのに、この態度は頭がおかしいとしか思えない。
いつも女の子に囲まれて、私にはいつも嫌味を言う。
確かに学園一のイケメンだが、中身がないただの遊び人だ。
私は理由を付けてコイツを切りたいと思っている。
ただ、婚約を解消するにはそれなりの理由が必要だ。
私から理由もなく婚約破棄できないから、私は『それなりの理由』を探している。
ハーバートに寄ってくる女子について、私が何も言わないのも『それなりの理由』を探るためだ。ハーバートが女子と問題を起こせば、それを理由に婚約破棄できる。
私がハーバートを睨みつけたのに対抗したのか、ハーバートは私に「また貧乏人に負けたのか」と言った。
――あー、イライラする……
公衆の面前で罵声を浴びせるわけにはいかない。だって私は公爵令嬢。
私とハーバートは親同士の都合で5年前に婚約した。
私はハーバートのチャラチャラしたところが嫌いだ。
ハーバートも私の高飛車で気が強いところが気に食わないのだろう。
お互いに嫌い合っているから、何度も結婚はできないと両親に訴えた。
だが、却下され続けている。
婚約してしまったという世間体が両家にあるからだ。
私はハーバートを無視してその場を離れようとすると、取り巻きの女子が「あら、ハーバート様に愛されていない婚約者様、ごきげんよう」と私に嫌味を言った。
私は不快感から女を無視してロベールとその場を去った。
――あー、イライラする……
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