ぬくもりの向こう側

勝利だギューちゃん

第1話

「今日は来てくれてありがとう。会えて嬉しかったよ」

「僕も。手紙くれてありがとう」

「また、来てね」

「うん」


差し出されて手を握る。

温かい。


このぬくもりを感じていたい。

しかし、そうもいかない。


丁度、列車が来た。

僕はこれに乗り、現実へと帰っていく。


ドアが閉まる瞬間まで、彼女は手を握っていてくれた。


席に着く。

ローカル線なので、空いている。

適当に腰を下す。


右手を見る。

まだ、ぬくもりが残っている。


女の子に手を握ってもらっただけで、ときめく。


このような、淡い気持ちはいつまでも、持ち続けたい。

今度会える日まで、このぬくもりが残っていることを・・・


「彼、帰ったか」

「うん。今、列車が発車したよ」

「言わなくてよかったのか?」

「うん。彼には知らないでほしいから」


久しぶりに好きだった男の子と会った。

とても、大人しい子だ。

それに、とても可愛らしい。


でも、もう会うことはない。

なので、最後に会いたくて、手紙を書いた。


彼は来てくれた。

嬉しかった。

思い出が出来た。


なので、私は彼の手を力いっぱい握った。

少しでも長く、私のぬくもりを覚えていてほしい。


「じゃあ、行こうか」

「うん・・・」


私は別方向への列車に乗る。

もう、ここへは来れない。


なので、彼には嘘をついてことになる。


でも、それでいい。


また、違った形で会える。

その日を信じている。

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ぬくもりの向こう側 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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