第5話 中国人の漢詩と日本人の俳句に見る民族性
「一言以てこれを蔽(おお)う」が如く、一つ一つの漢字に万感の思いを込めた漢詩。
また、簡潔・質素な俳句とは、逆に人の心を活性化し・豊かにしてくれる。だから、「Haiku」は、世界中で嗜まれています(漢詩は漢字を知らない人には無理ですが)。
100円という値段の中に、優れた品質と機能を詰め込もうとする「こだわりと至誠」とは、中国の漢詩や日本の俳句で鍛えた中日の人間性に由来するのです。
数十万もの漢字の中から、その場その時、自分と大自然との間合いにピッタリ合致した文字を選び出し、絶句や五・七言律詩のような入れ物にピタリと収める。
一旦、自分の心を極限まで広げ、逆に極小にまで縮めることで、その場・その瞬間の大自然と一体化し、平仄(ひょうそく)・押韻などの規則によって、捉えどころのない人の感情や自由な思いを一つ一つの漢字に凝縮する。
「・・・一片氷心在玉壺。」なんて、永遠の名句でしょう。
例えば、
○イソーの100円のコーヒーカップ。
形も洗練されていますが、その色に驚きます。
赤・緑・茶の三色あるのですが、どれも深海(しんかい)のような深い味わいのある色。
コーヒーそのものの味だけでなく、カップの形で楽しみ、色合い・風合いという味わいでも愉しませてくれます。
これこそ、何千年ものあいだ喫茶を楽しんできた中国人の醸し出す(歴史の)重みと言えるでしょう。100円でこんな色(風味)を出せるなんて、マスコミの力で有名なだけという欧米の陶磁器メーカーには到底真似できない中国人の力(感性と技術力)に驚きます。
また、逆に「中国らしい素朴さ・シンプルさ」のある白のコーヒーカップ。
この何の変哲もない器(うつわ)の素晴らしさとは、使っているうちに細かいひび(亀裂)が入ってくるという「無機物が成長する」風合いを味わうことができるということ。
京都・大徳寺・孤篷庵に伝わる国宝「井戸茶碗」の(ひびの持ち味という)枯淡の味わいを100円で味わえる、とは少々オーバーですが、そういうことをさり気なくやってしまうのが中国。
これだけの「名品」を、末端価格100円で多くの人が手にすることができるようにする為に、どれほど「漢詩を作る苦労」があったのか。「100円」の中には、中国数千年の(文化・文明の)歴史が凝縮されていると言っても、決してオーバーではないのです。
優れた感性を持つ日本人のバイヤー(企画・市場調査)と、どんな難問でもいろいろな次元と様々な位相で解決することのできる中国人のプロフェッショナル(製造から販売まで全て見れる専門家)のコンビだからこそ、できることなのでしょう。
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