第19話 西のドワーフ

ウルフたちと5分ほど遊んでいると、門番と若いドワーフが駆け足で門から出てきた。


ガルフ戦士長が近寄り話しかける。


「ここより東の集落から来たガルフです。そちらが長ですかな?」


「はい。私が父の後を継ぎました長のマークです。こちらに来ていただけたということは食料を分けていただけるということでよろしいでしょうか?」


若いドワーフことマークは、早とちりしているようだ。私たちを見渡し食料がないことがわかると明らかにがっかりしている。


「実は東でも食料が不足している状態です。そのため食糧支援はできません。しかし、ハーフリンクとピクシーそして我々を加えて平原に畑を作っています。それで何とか食料をまかなおうとしています。それに参加しませんか?」


「それは、我々に集落を捨てろと言っているのですか?」


「そうなります。東は彼女、清美嬢のおかげでウルフたちも仲間に加わっています。食料を荒らすラッドモールもウルフのおかげで食糧庫には近づけなくなってきています。食料が乏しいのであれば、拠点を移すべきだと私は考えますがいかがでしょうか?これは東の長からも許可を得ています」


「私はまだ長になって失敗ばかりですので民の皆と相談してきてもよろしいでしょうか。あとそれだけ融通していただけるということは何か対価が必要だと思うのですが、先にそれを教えていただきたい」


「分かっているとは思いますが清美嬢は異世界の住人です。その異世界に我々のいるダンジョンよりも強力な魔物が存在するダンジョンが発見されました。そこに砦を作成する手助けをしてほしいのです。その労働の対価として食料を提供させていただきます」


「分かりました。30分ほど時間をください。説得して見せます」


そういうと西のドワーフの長、マークさんは駆け足で洞穴へ戻っていった。


「清美嬢。勝手に話を進めてしまって申し訳ありませんでした」


「いいえ。問題があるようには思えませんでしたし、私が話すよりも同じドワーフである戦士長が話してくれた方が相手も信頼できたでしょう」


「そういっていただけると助かります」


それから時間を持て余した私たちはその場で待機して、ウルフたちは狩りへ出かけた。そして、ドワーフたちが洞穴から出てくるころにウルフたちも戻ってきた。


どうやってウルフたちはドワーフたちの出てくるタイミングを見計らっているのかは不明だ。


「ガルフ戦士長。清美様。お待たせしました。情けないことですがそちらの言う通りお世話になります」


ここでガルフ戦士長が西のドワーフへテイムについて説明してくれる。


「実は東のドワーフは全員、清美嬢にテイムされている状態です。申し訳ありませんが、西のドワーフの皆様もテイムされて貰えませんか?」


流石にマークさんを含め12人のドワーフたちは驚いた様子だ。そのまま会議が始まり私たちはまた待ちぼうけにあった。

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