第6話 リン君
ダンジョンから外に出ると、時刻は夕方だった。私たちが家に着くころには夕食の準備が終わっており、父親は既に夕食を食べ終えていた。
「お前たち、遅かったな。何か危ないことしてないだろうな」
私は正直に話すか迷ったが兄が口をすべらせる。
「ちょっと危ないかもしれんけど今後のためには必要なことや」
父親は
「そうか、あんまり心配させんなよ」
とだけ言って話を終わらせた。
後で母親から話を聞いたのだが散歩中に海を渡っているイノシシが海に引きずり込まれるのを見たらしい。釣りが趣味の父親は、もう海には出られないことを悟ったらしく落ち込んでいたそうだ。
私は、急いで夕飯を食べるとまだ店じまいをしていない個人商店へ向かい野菜の種を仕入れていく。お店の人は
「お金はいらないからそだったらおすそ分けよろしくね」
と言って野菜の種を譲ってくれた。
しかし、これだけでは島中の食料どころか家の食料にも足りない。何か他の方法を考える必要がありそうだった。
私は暗くなる前に家に帰り布団の中で、野菜以外の食料の調達について考える。電気が通らなくなっているので考える時間はたっぷりとあったのだが途中で寝てしまった。
朝起きると母が困った顔をしていた。どうしたのか聞いてみると
「玄米を精米できなくて困ってるのよ。電気が通ってないと不便ねぇ」
などと言っていた。家は何でも買い置きをしておくので玄米なら5キロ以上あるだろう。それも育てられればとも思うが精米などの工程をできるのかが不安ではある。インターネットも使えないので年の候で年配者に聞くしか方法はないだろう。
対処方法が分からなかったので母の疑問は後回しにして私はダンジョンまでやってきた。
中に入ると、子狼の一匹がこちらへ突進してきた。それを追いかけてちっこいのことハーフリンクの人?が駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか?人間さん」
「大丈夫です。ちょっと驚いただけで。えーと、何て呼べばいいですか?」
ハーフリンクさんは首を傾げているので質問する。
「名前とかってないんですか?」
「名前って何ですか?」
「えーと。その人を表す言葉みたいなものです。ちなみに私は夏川清美と言います」
「ああ。私は西の森の43番の次男と呼ばれています」
「・・・」
私は言葉を失った。まさかどこ出身のどこどこの誰の子供みたいな呼び方をしているとは思わなかったのだ。
「ああ。好きに呼んでいただいて構いませんよ。なんなら名前?をつけていただいても」
「ところで男性ですか?女性ですか?中性的な顔立ちをしているので分かりにくくて」
「男です」
「ではリン君で」
安直にハーフリンクからとったなんて言えない。そこ、ネーミングセンス(笑)とか言うな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます