第377話 魔王の面影
ノルマンはそう言ってから、アメリアに微笑みを向けた。
冨岡はそんな彼を屋台の中に案内する。
「どうぞ、ノルマンさん」
屋台のドアを開けると、全ての事情を知っているレボルが出迎えた。
「どうも、初めまして。レボルと申します。トミオカさんに雇われている従業員・・・・・・なんですかね?」
どうして懐疑的なのか、と冨岡は疑問を持つが、確かに冒険者として依頼をしているので正式な従業員かどうかは怪しい。
冨岡の気持ちとしては、身内であり従業員ではあるのだが、誰かに紹介する時は戸惑うだろう。今のレボルのように。
レボルの言葉に引っかかりながらも冨岡は、ノルマンを紹介する。
「こちら、ノルマンさんです」
名前を伝えただけなのだが、レボルの背後で椅子に座っていたフィーネが大興奮していた。
フィーネは立ち上がり、ノルマンに歩み寄る。
「フィーネだよ。おじいちゃん、よろしくね」
無邪気な挨拶をするフィーネにノルマンは、穏やかな老爺の表情を向けた。
「ほっほっほ、元気な子じゃな。フィーネというのか」
そんな話をしている途中で、ノルマンの顔色が変わる。
彼は何かに驚いた様子で振り返り、冨岡に小さな声で話しかけた。
「もしかしてこの子のことかの? いや、じゃが、魔力の色は優しい緑じゃ。魔王のそれとは違う。これは一体・・・・・・」
ノルマンは魔力を見ることができる。それ故に、フィーネの持っている『聖女』の力に気づいてしまったのだろう。
色こそ違うが、魔王の子と言われても疑わないレベルだったようだ。
ノルマンの疑問に気付いた冨岡は、慌てて口を開く。
「ノルマンさん、フィーネちゃんも特殊な状況で・・・・・・また後で説明します」
「この子もまた高名な魔法使いの血筋じゃな・・・・・・わかった。疑問は置いておくとしようう。それじゃあ、例の子は・・・・・・」
言いながらノルマンは椅子に座っていたリオに視線を送る。
この場にいる子どもは二人。消去法で考えれば、リオしかいない。
まじまじと眺められたリオは、会釈をしながら名乗る。
「あ、えっと、リオです」
「この子が・・・・・・」
リオの顔を見た途端、ノルマンは呼吸を止めたのかと思うほど静かになった。
彼の脳裏に魔王の顔が浮かぶ。
切れ長な目、長い睫毛、薄い唇。事前情報があるからではない。確実にリオには魔王の面影が存在したのである。
「ノルマンさん?」
冨岡が声をかけると、ノルマンは意識を取り戻したように顔を振った。
「あ、ああ。リオというのか。ほっほっほ、初めて会った気がせんな。いい顔をしておる。ノルマンじゃ、よろしくな」
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