第277話 疲労回復豚肉カレー

「私もご馳走になっていいんですか?」


 最初はそう遠慮していたレボルだったが、冨岡がどんな料理を作るのかという好奇心に従い一緒に教会に戻る。

 貧民街に来るまでは冨岡が屋台を引いていた。しかし、明日のことを考えればレボルに屋台の移動を教えておくべきだろう、と考え任せてみる。

 その間に冨岡は屋台の中で調理をすることになった。

 そして移動中。アメリア、フィーネ、アレックスは机を囲んで座り、冨岡は調理台に向かっていた。

 ブルーノの家での出来事に関しては、アレックスに聞かせるわけにもいかないため、あえて何も言わない。

 そんな中、冨岡何を作ろうかと模索する。


「さて、何を作ろうかな。アレックスやレボルさんもいるから、ちょっとガッツリした料理がいいだろう。男の子が喜ぶ味・・・・・・そうだなぁ、子どもが好きな料理ランキングで言えば、唐揚げ、ハンバーグ、オムライス。唐揚げは前にも作ったし、ハンバーグはいつも食べてるし、オムライスにするか・・・・・・いや、オムライスはキュルケース家で作ったからなぁ、違う料理を作ってみたい。よし、朝に作ろうと思って断念したカレーを作ってみるか!」


 独り言の中でメニューを決定し、冨岡は戸棚から市販のカレールーを取り出した。

 林檎と蜂蜜が溶け込んでいる甘めのルーだ。


「スパイスに慣れていない人や子どもが食べるのなら甘口がいいよな。野菜は人参、ジャガイモ、玉ねぎがあるはず。肉は何にしようか。地域によって違うらしいけど、そうだな・・・・・・今日は豚にしよう。豚肉は疲労回復にもいいらしいからね」


 今日も大変だった、という思いが冨岡の中にあるのだろう。異世界に来るようになってから、様々な出来事が起きてばかり。

 それほど考えるまでもなく、豚肉を選択していた。

 豚肉にはビタミンB群が豊富に含まれている。また、玉ねぎに含まれるアリシンを一緒に摂れば疲労回復効果は高まる。スパイスの効果もあり、このタイミングでの豚肉カレーは我ながら良いチョイスだ、と冨岡は満足げだ。

 まず初めに野菜を切る。人参、ジャガイモ、豚肉は一口大に。玉ねぎは可能な限り薄切りにする。


「まずは厚手の鍋に油を敷いて、薄切りにした玉ねぎを炒める。最初は強火で・・・・・・軽く色がついてきたら弱火にして、飴色になるまで炒めるんだ。ここで残りの野菜を入れて軽く火を通す」


 カレールーのパッケージの裏を読みながら冨岡は調理を進めた。

 野菜に火が通ったら適量の水を入れ、お肉を加えて沸騰させる。ここで灰汁を取ることで雑味が減るのだとか。さらに水の状態から肉を入れることで柔らかく仕上がる。

 全体にしっかり熱が入ったところで火を止めて、カレールーを入れ完成だ。

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