第170話 箝口令の謎
「この場で私が答えるわけにはいかない、と」
「えっと、どうしてですか? アメリアさんなら即了承すると思ってました」
冨岡が疑問を重ねるとアメリアは、少し申し訳なさそうな表情で微笑んだ。
「現実的な話ですが、新しい子を受け入れるにはそれなりに資金が必要になります。今、この教会にある程度お金はありますけど、それはトミオカさんが稼いでくださったお金です。私の一存で決めるわけにはいきませんよ。もちろん、受け入れたい気持ちはありますが・・・・・・」
そんなアメリアの言葉を聞いた冨岡は強めの口調で言い返す。
「何を言っているんですか」
「え?」
「俺の目標は困っている人を助けることです。アメリアさんが『人助け」だと判断したのなら反対しませんよ。それに移動販売『ピース』は俺だけのものじゃあないです。アメリアさんがいて、フィーネちゃんがいて成り立っているんですよ。俺一人で稼いでいるなんて思ってません」
冨岡の強い意思を感じたアメリアは、自分は気を遣いすぎていたのか、と気づいた。
それと同時に冨岡は、アメリア側からすればそう考えて当然かもしれない、と反省する。
「すみません」
「すみません」
同時に謝罪する二人。それを聞いていたフィーネは、残っていた唐揚げをフォークで突き刺しながら笑う。
「あははっ、なんで二人とも謝ってるの」
フィーネの笑顔で一気に気持ちが軽くなり、冨岡は優しい口調に戻った。
「フィーネちゃんの言う通りだね。アメリアさんが謝ることはないですよ。俺がもっと早めに具体的な考えを話しておけばよかった」
「そんな、私がお金に対して敏感になりすぎていたんだと思います。トミオカさんの話を聞いていれば、受け入れることを即断できたはずですから」
互いに相手をフォローするが、そもそも『新しい子を受け入れる』という話は本題ではない。
そう考えた冨岡は話を『フィーネの特別さを理解できる出来事』に戻す。
「ひとまず新しい子の話は後日になったんですよね。ん? じゃあ、フィーネちゃんの話はルネッサさんから聞いたってことですか?」
「そうなんです。ルネッサは私よりも先にこの教会で働き始めていて、子どもたちを管理する立場にありました。ですから、フィーネがこの教会に来たときも、ルネッサがその詳細を聞いていたんです」
アメリアがフィーネの出生について詳しく知らず、ルネッサが知っているのはそういうことだったらしい。冨岡が納得して頷いたところでアメリアが話を続ける。
「ちょうどいい機会だと思ってルネッサに問いかけたところ、どうやらフィーネの出生については意図的に隠されていたようなんです。誰にも知られないように、と」
「意図的に? どうしてですか。フィーネちゃんの出生が周囲に知られて何か不都合でも?」
「それには『白の創世』が大きく関わっていて・・・・・・」
彼女は言いにくそうにしながらも続けた。
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