第168話 突然の訪問者

 冨岡にとって他にはない大切な時間。

 そんな食事を終えたところでアメリアが冨岡に話題を振る。


「じゃあそろそろ、私の話を続きをしても構いませんか?」


 その言葉から、彼女が食事を終えるまで話を留めていたことが読み取れた。

 冨岡からすれば待たせていたことが申し訳ないくらいである。冨岡が即座に頷くと、アメリアは一度咳払いをしてから話し出す。


「お話というのは食事の前にしていた続きなのですが」

「続き・・・・・・ですか?」


 およそ一時間ほど前だというのに、何の話なのか心当たりがない冨岡。いや、様々な話をしていたから心当たりが多すぎる、と表現する方が正しいだろう。もしくは料理に夢中すぎて話の順番がわからなくなっていたのかもしれない。

 冨岡が聞き返すと、アメリアは当然わかるだろうという口ぶりで話し始める。


「そうです。私が『昨夜まで驚いていた』という話の続きなんですけど」


 そこで冨岡はようやく、フィーネが魔力を見ることができるようになった話の続きだと気づいた。


「ああ、フィーネちゃんの!」


 そんな反応をすれば思い当たっていなかったことが明白だが、アメリアは気にせず進める。


「ええ、フィーネが魔力を見えるようになったことを私が『昨夜驚いた』と話した時、トミオカさんが『今は驚いていないのか』と聞き返したじゃないですか」

「ああ、そうですね。料理やフィーネの勉強があったから後で、って」

「そうです、そうです。もちろん、今も驚いてはいるんですけど、その理由を理解できる出来事があったんですよ」


 フィーネの特別さを理解できる出来事。興味の湧く話の始め方に感心し、冨岡は前のめりで反応する。

 冨岡自身もフィーネの能力には疑問を抱いていた。命を救われた時の『聖女の奇跡』にしろ、一度学んだことをこなせてしまう賢さにしろ、五歳とは思えない。

 それが納得できる出来事、となれば興味を持つのは当然だ。


「一体何があったんですか」


 自分がいない間にどんなことが起きたのか、と冨岡は問いかける。

 するとアメリアは、フィーネの頭を撫でながら答えた。


「実はトミオカさんがいない間に懐かしい人がお店に訪れまして」

「懐かしい人?」

「はい。この教会・・・・・・『白の創世』があんなことになる前、ここで働いていた人なんです」

「えーっと、簡単に言うとアメリアさんの元同僚ってことですかね」


 冨岡が言葉を噛み砕きつつ聞き返すと、彼女は優しく頷く。


「ええ、そうです。ルネッサという私よりも少し歳上の女性なのですが、教会が今のようになってすぐ、彼女が生活のために他の施設に転職して以来会っていませんでした。そんなルネッサが突然訪ねて来て」

「いきなり、ですか? フィーネちゃんの話をするために?」

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