　残念そうな冨岡。

　自分のせいでそんな表情にさせてしまったのだろう、とアメリアは口の端にパンくずをつけながら謝罪する。

「すみません、お力になれず」

　先ほどまで美味しいものを食べて幸せそうだったアメリアに謝らせてしまった、と気づいた冨岡は逆に申し訳なくなり慌てて否定した。

「そんな、アメリアさんのせいじゃないですよ。俺が甘かっただけですし、最悪売り歩けばいいだけですから」

　そこまで発言した冨岡は自らの言葉に引っかかる。

「売り歩けば・・・・・・そうですよ！　そうすればいいんです！」

「え？」

　突然、飛び跳ねるようにテンションをあげた冨岡に驚き、アメリアは目を丸くした。その隣でフィーネはハンバーガーを食べすすめている。難しい話にはついていけないと判断したのだろう。

　冨岡の言葉からは全てを理解できなかったアメリアは改めて問いかけた。

「どういうことですか？　食べ物を籠に入れて売り歩くということですか？　確かにパンを家々に売り歩いている人もいますが、あれは売れ残りの処分のようなものですし、それだけで商売として成り立つものなのでしょうか？」

　この世界で売り歩くといえば大きめの籠、バスケットのようなものに入れて売り歩くのが主流なのだろう。

　しかし、冨岡のアイデアはそんなものではなかった。

「いえ、移動販売ですよ」

「移動販売？」

　毎度ながら冨岡が口にした言葉を理解できない場合、アメリアはそのまま聞き返す。

　そしていつも通り冨岡は噛み砕いて説明するのだ。

「俺の国では移動販売という商売が確立しているんですよ。基本的には車を牽いて、車の中で調理をして移動しながら販売するんです。いや、車の中で調理しなくても、完成品を車で売り歩くこともありますし」

　易しく説明したつもりだったが、冨岡の想像する『車』とアメリアの想像する『車』は違う。

　アメリアは首を傾げながら浮かんだ疑問を言葉にした。

「車ってフォンガ車のことでしょうか。フォンガ車を扱えるのは専門の業者だけですし、車はそれ自体が目が飛び出るほど高額です」

　言いながらもアメリアは口の端にまだパンくずが付着している。

　いつ言おうかと思いながらも冨岡は、会話の中の疑問に触れた。

「フォンガ車って・・・・・・」

　そこまで言葉にして冨岡の想像力はようやく、この世界の理屈に追いつく。

　この世界には魔物が存在する。知らない単語だが、専門の業者だけが扱えるのならば魔物の可能性が高い。そしてアメリアはフォンガと車を切り離して考えていた。

　馬車のようなものだろうと判断した冨岡は、疑問を止めて話を進める。

「俺が言っているのは、車というか屋台に車輪がついたものですよ。ハンバーガーならちょっとしたスペースで調理できると思いますし、これなら場所を必要ともしません。あと、アメリアさん口の横にパンついてますよ」

　全てを解決する方法を思いついたと同時に、アメリアのパンくずについて指摘し完全にスッキリした冨岡。

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