第57話 料理人としての興味
行動を起こした冨岡がメルルズパンに戻ってきたのは約二時間後のことだった。
どうやらメルルがフィーネにパン作りを教えていたらしい。
手が粉だらけになっているメルルは冨岡が帰ってきたことに気づくと店の奥から出てきて迎え入れる。
「お帰りなさい、トミオカさん。あら、随分な荷物ですね」
メルルの言う通り戻ってきた冨岡は新しいリュックを背負っており、中には何かがパンパンに詰まっていた。
「ああ、これは・・・・・・」
冨岡が返答しようとすると少し遅れて手どころか顔まで粉に塗れたフィーネが冨岡を迎える。
「トミオカさんだ」
「ただいま、フィーネちゃん。メルルさんもありがとうございます。って、フィーネちゃん粉だらけじゃないか」
「パンの作り方教えてもらってたの。楽しかったよ!」
「それはよかった。メルルさん、フィーネちゃんはいい子にしていましたか?」
冨岡がメルルに問いかけると彼女は手の粉を払いながら優しく微笑んだ。
「ええ、すごくいい子にしていましたよ。何にでも興味を持ってくれますし、すごく頭のいい子です」
「フィーネ、いい子!」
嬉しそうに手をあげるフィーネ。
待たせていたフィーネの状況を確認すると冨岡はその場にリュックを下ろした。
「メルルさんとフィーネちゃんのおかげで必要なものを買ってこれました。大急ぎだったので余分に買ってきたかもしれませんが・・・・・・」
改めて荷物を確認するとメルルが再び問いかける。
「結局その荷物はどうしたんですか?」
「ああ、これは材料です。そうだ、メルルさん。お昼ご飯をご馳走するので厨房を貸していただけませんか?」
「え、厨房ですか?」
冨岡の提案に少し驚くメルルだったが、自分のパンを理解してくれたと言うのもあり既に心を開いていた。
それだけではなく、冨岡を待っている間にフィーネからその関係性を聞いている。冨岡が孤児院に協力しようと動いているという情報からおおよその話は理解していた。
さらには見たこともない食べ物を持っていたとも聞いており、食品を扱う者としてメルルの好奇心は刺激されている。
これから冨岡が何をするのか見てみたい。そう思ったメルルは冨岡の提案を受け入れた。
「パン作りに特化した厨房になっていますがそれでよければ・・・・・・」
「ありがとうございます!」
そのままメルルは冨岡を厨房に案内する。
フィーネはその背後をトコトコと着いていった。
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