そうだ! ドワーフ自治領自由都市へ行こう ViR
第19話代官
ドワーフ自治領への道は、色んな意味で長いものとなった。
新兵の『行軍訓練』と言うお題目もあって、100名程の騎士・兵を連れての行軍となり、俺も騎乗移動が基本となった。
この為馬車には殆ど乗せて貰えなかった上、不慣れな移動で距離が稼げず予定も延びた程だ。
慣れない騎乗で出来た股ズレを回復魔法で誤魔化し、指揮と行軍訓練の日々。それだけでも激しく消耗しているのに夜は夜でそれぞれの街に派遣している街の有力者を交えた会食、その席で世間話として彼らの要望を直に訊くという、何とも面倒くさい政治パフォーマンスを取る毎日が連日連夜続いた。
何度馬上で居眠りをしたことか!!
騎馬遊牧民でもないのにそれに近い経験をするハメになるとは
だいたい我、公爵家の嫡男ぞ?
こんな蛮族か騎士のようなぞんざいな扱いをされていいのだろうか? 良い訳が無い。
もっと甘やかされ、蝶よ花よと育てられたい!
なんならかわいい彼女も欲しいし、浮名を流すようなイケない行為にも興味津々なまである。
今は辛くとも、破滅の未来回避にがんばらないと!
それに今日までの苦行も明日には解放される。
夕暮れ前にはいよいよドワーフ自治領だ!
自治領に付いたら羽を伸ばそう! 数日はのんびりしたいな……ドワーフ自治領と言えば湯が沸いていると言う。
日本の露天風呂とは言わないまでも、ローマの公衆浴場でいい風呂に入って疲れを癒したい!!
おっと、会食中だというのにトリップしてしまっていた。
「シュルケン様。当家が代官を務めるこの街の役目がどのようなものか? ご存じでしょうか?」
歓談中に代官の男が今までの話題をぶった切って話を切り出した。
「ふむ、『
事前に調べていた通りの説明をする。
なんだこの茶番劇は……食卓は国会で行われているクイズ大会じゃないんだぞ?と内心、この代官への不満を募らせる。
「その通りです。屋敷への道も重要ですが、特に戸締りはキチンとしなければなりません。」
つまりは、自由都市ドアルゴを危険性のある場所つまり外、公爵領都を家、この都市を玄関と表現しているのだ。
戸締りとは防備の事……検問程度の設置ではなく、武装した私兵と要塞化をしたいと言った所だろうか? 最初は吹っかけて騎士団を常駐しろとでも言いたいのだろう。
しかし、それは杞憂に過ぎない。
なぜなら自由都市ドアルゴ~領都間の道路整備も、前線への道路整備も最低限しかしていない。
仮にドワーフ自治領が反乱を起こしたなら焦土作戦をしながら後退し、防衛に徹すればこちらの勝ちだ。
それを判っているのであれば暴挙にはでまい。
何を隠そう最初に自由都市ドアルゴ~前線間の道の整備を熱望していたのは父上だ。
戦場での武器を重視したのだろうが、俺は違う。
食料と人員、武器を多少割高でも安定して大量に供給できる港からの道を重視した整備案を通した。
そのため自由都市ドアルゴから伸びる道路は、砂利を撒いただけの簡易なものとなっている。それでも土剥き出しの道に比べれば幾分もマシになっている。
ドワーフ自治領に内在する危険をことさらに誇張し、独自の兵力を保持し私腹を肥やすために、自身の権限を強化するのを目的な、会話誘導だろうがそうは問屋が卸さない。
当主代行の父上でさえ、俺の所有する商会を自分の
現状、投資しても元が取れるからいいものの、軍備増強などの平時に対する不良債権の増加には俺は反対である。
何故なら
ドワーフ自治領自体、肥沃な土地とは言えず食料は基本的に輸入に依存、金属などの加工業で生計を立てているので国を名乗れるほどのリソースを持っていないのだ。
「領主代行の父上には、代官殿の懸念は伝えておこう……」
幾ら公爵の孫とは言え立場は公式な騎士以下である。
代官風情にも敬った言葉にしなくては成らないとは……全く面倒だ。
こうして街を立ったのだが、どうにも俺は代官の言葉に違和感を感じていた。
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