逆さまに見るゆめ
針金鳥
火守
カァン、カァンと星打つ音は夜の端までよく響く。
気まぐれな月明かりだけでは心もとないと、火守たちはあの黒い幕へと小さな灯りをかけることにした。
太陽の光をしっかりと浴びた石をたっぷりと炉にくべて、赤々と輝きだしたものへと鎚をふるう。一つ、二つ、三つ。打たれるたびに明滅を繰り返し、散った火花が線を引き、夜空流れる星となっては消えていった。
響く音が石の中で転がっては、内側から仄かな光が弾けだす。絵具を塗り重ねるように丁寧に、じっくりと。焦ってしまえば途端に石は割れてしまう。明るく輝くように、されど優しく。分厚い手袋に覆われた火守が握る鎚の一手は、気を緩めずにふるわれる。
やがて仄かな灯りは眩しいほどに膨らんで。鎚の音無くとも輝くようになったのならば、夜底に星が一つ、新たに灯った。
火守の誰もが目指すのは、北の空に一際輝くその不動の星。最初の火守が空にかけた星。それに敵うものは未だない。
回る夜空の中央で、瞬く灯りは消えずにずっとそこにいたまま。
彼らの一番星で在り続ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます