家に居場所がない。

 親の顔を見たくなくて、夜中まで出歩く中学生。

 自宅に居場所がなく、なかなか帰ろうとしないサラリーマン。

 親も家もなく、段ボールの上で寝ているホームレス。


 帰るべき場所がないのは、みな同じようだ。

 いや、もしかしたら夜中まで歩いていた中学生が、なかなか帰らないサラリーマンになり、親と自宅がなくなりホームレスになるのかもしれない。


 学校で問題を起こしたときの、家に帰るまでの道中を思い出す。

 家に帰れば怒られる。

 かといって、遊びに行くことも出来ない。

 そんなことをすれば、かえって問題が大きくなる。

 その時の帰り道は、処刑台へ自ら歩くようなものだった。

 家の前を何度も往復したものだ。


 一人暮らしを始めてから、夜まで遊び歩いて、もう帰るかと最寄り駅までついた時を思い出す。

 なんとなく、帰るのが嫌になった。

 この楽しい気分が終わって、現実に戻るのが嫌とか、そういうわけじゃなかった。

 家そのものに対する、嫌悪感。

 もはや私を叱るものなどいないのに。

 結局、駅前のネカフェに入った。


 家に居場所がないとは、こんな気分が延々と続くことだろう。

 仕事が辛い、明日が不安だと言っても、家に帰れば多少は和らぐものだ。

 家がなく、これらをすべて背負って、生きていくのはとても辛いことだ。

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