仕事はした。

 結局、仕事には行ってしまった。

 ここで、来月の給料なんか知らん、今すぐ出て行くと、それだけのことをやってのける行動力と、決断力があれば、私の人生も少しは違ったのかもしれない。


 まあ、いい。

 全て放り投げて逃走するという、人生最初にして、最後にして、最大の決断を行ったのだから。


 今日は逃走への一歩として、本を少しだけ処分した。

 何年も前の本で、雑に扱っていたわけではないけど、経年劣化でぼろぼろだ。これなら古本屋に売れるわけもないので、あまり心は痛まなかった。


 それより昨日捨てたフィギュアだ。

 どう考えても惜しい。


 この携帯もいずれは処分するが、もはや電源も入らない、ひとつ前の携帯も、まだ自宅にある。調べたら携帯ショップで引き取ってくれるらしい。


 一つずつ、一つずつ、手放していこう。

 逃走までと考えれば1ヶ月はある。


 いや、家賃を払わなくとも、あれ、入ってませんでした? すみません、来週にはとか、来月の給料で2ヶ月分払いますとか、そういうことを言えば、粘れるのかもしれないが、忘れてはいけない。そういう交渉ごとや、まあ、一種のコミュニケーションが苦手だから、逃走を決めたのだ。家賃も払わないのに、居座り続ける図太さなどないのだ。

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