第8幕 帰郷
7月2日。
俺は電車で千葉に向かってる。
少し早い時間だが、特に何もすることないし、実家の方が落ち着けるかもしれない。
頬が痛い。
一応シップはしてるが、少し腫れてる。
親には転んだと言っておくか…。
その歳で何やってるんだとか言われそうだけど…。
実家に帰ると言っても正直遠いところではない。
実家がある大久保まで、行くのに1時間ぐらいだ。
高校までずっと千葉で育ち、大学に通うために上京した。
あまりいい思い出が無かったから、早く出たかったのかもしれない。
その結果がこれだ。
あの中で働きたくない。
浮気された男として笑われていくのか?
俺がずっと犯人扱いなのか?
早く犯人を捕まえてほしい。
警察もお手上げ状態なのだろうか?
そんなことを考えてるうちに駅に着いた。
あまり変わらない風景だ。
家には徒歩15分ぐらいでつく。
小さな一軒家だが自分の部屋があり、1人でゆっくりできる。
地元に帰るのは年末年始ぶりだ。
家に着きチャイムを鳴らすと、母さんが出てきた。
「ただいま。」
「友和お帰りなさい。」
「また痩せたんじゃないの?」
「ご飯食べる?」
「いらない。さっき食べてきた。」
本当は食べてない。
何かを食べる気分になれないのだ。
「本当に大丈夫なの?」
「それにそのシップは?」
「うん……。ちょっと転んじゃってね。」
ごめん母さん。
嘘をついた。
「相変わらずドジねー。誰に似たのかしら。」
「お父さんが待ってるから行って上げなさい。」
しっかり者の父と優しい母。
本当にどちらに似たのかわからない。
リビングに行くと父がいた。
「ただいま。」
「おかえり。」
「今日の夕方頃に葬式行ってくる。」
「………わかった。大沢さんのか?」
「ああ……そうだよ。」
「昼に
「大沢さんは面倒を見てくれてたみたいでな。」
「葬式に出るそうだ。」
5歳離れた妹だ。
昔はお兄ちゃん呼びで、後ろからついてくる可愛げのある妹だったが………今は友和呼びで言葉遣いも悪い。
やはり女は怖い…。
日に日に凶暴化してる気がする。
部屋はほぼそのまんまの状態。
布団も変われば寝れると思ったが、そんなことなかった。
会社での一件が頭の中で蘇ってくる。
木原……。
あんなやつ死ねばいいのに。
そう思いながら俺は目を瞑った。
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