第6話 不倫そして
ふと、背後に気配がして振り返る。
「あらぁ、思い出してくれた?悟」
香澄が俺の名前を呼ぶ声に反応したのはベッドの上の真っ黒な人の様なもの。
香澄が部屋に入ってきた。
ラバースーツは着ておらず、ごく普通の服に着替えていた。
「私の名前を思い出してくれたんなら、分かるわよね、今の私の状況が」
俺を見下すように話す香澄。
「途中までは思い出した、香澄の旦那に不倫現場を目撃されて逃げたとこまでだが」
それを聞いてまたも反応するベッド上の真っ黒な人の様なもの。
香澄はベッドの上に腰掛けると、真っ黒な人の様なものを叩いた。
「静かにして!」
「ううぅうぅぅぅ!」
真っ黒な人の様なものは何かいいたげにしながらも静かになった。
「あの後、俺は逃げる途中で頭を打って記憶が一部失ってたみたいなんだ」
俺の言葉に2、3度頷いた香澄。
「じゃあ教えてあげる」
「あなたはそのまま逃げちゃった、私は主人に全身ラバースーツ姿を見られて、ドン引きされた」
俺は声を出さずに頷く。
「あの時のプレイの事は覚えてないわよね」
俺は記憶を辿ってみるが、思い出せない。
俺の表情を見て察したようで香澄は続ける。
「あの時私は全身真っ赤なラバースーツで腕をアームバインダーで、足は股を開いた状態で拘束され、口がコンドームのようになったマスクを被り、股のところもコンドームになったラバースーツを着て、上の口にも下の口には男根を模したバイブが突き刺さった状態を主人に見られたの」
そういえば俺は香澄とのラバープレイが過激になっていった事を今更ながらに思い出した。
「主人は至ってノーマルな人、不倫だけでも傷つくのに、自分の妻が今まで見た事のない、あられもない格好で拘束されてたら、どう思う?」
「私は主人に謝罪も言い訳もできない状態だったのよ」と涙を浮かべて言い放った。
俺は香澄に何もいい返せなかった。
仮に自分の妻、美晴がそんな姿にされて不倫していたらショックで、すぐに離婚してしまうだろう。
俺がラバーフェチである事を差し引いてもだ。
ノーマルの人なら耐え難いと思った。
香澄が続ける。
「悟、あなた、あの時拘束具の鍵を持って逃げた事覚えてる?」
俺は首を横に振りながら、思い返していたが思い出せない。
「私は主人に、女性として屈辱的な言葉を浴びせられながら下の口をおもちゃで弄られて、そのまま放置、主人は肩を落として家から出て行き戻ってくる事はなかったの」
不倫は互いに非がある。
だが、香澄は代償を負ったが、俺は記憶を失くしてなにも代償を負っていない。
俺は今もごく普通に夫婦生活を送っている。
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