SCENE-002
「こんな初歩的な魔法も使えないのか」
父が私にくれた言葉の中で、一番印象に残っているのが
落胆混じりに溜め息を吐かれるくらいのことは、落胆を覚えるほどには期待されているだけまだマシだったと、今ならわかる。
当時はそんなこともわからずに、ただただ哀しかったけど。
私が十歳になろうかという頃。現役の領主である父から〝出来損ない〟と見限られてからは、もう……なんというか、それが〝親としての義務〟だから衣食住を与えてやっているんだ、と言わんばかりの無関心さで。父と戦場を共にする騎竜の方が私よりよほど愛情深く扱われていたとすら思う。
――そんな飼い殺しの日々とも、今日でおさらばだ。
私は手切れ金として渡された金貨のたんまり入った財布と僅かな荷物を持って、父たちが治める王都東の交易都市を後にした。
※領主は世襲制ではなく、また「一つの街に一人の領主」といった決まりもありません。わりとよく死ぬので。
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