第46話 現場検証と冴えている人

魔物を倒して馬車はまた塩湖へと走り出す。

ただ、さっきの戦闘の場所からそんなに遠くはないので、あっという間に塩湖の塩採掘場に到着した。

「ここまで楽チンやったな。馬車様々や〜」

「ホンマやなあ。トロールの肩に乗るより揺れへんもんなあ」

「トロール乗って移動なんて、ジャララだけだから⋯」

先日の作戦でここに来ていたカラチ達がそれぞれ馬車の感想を述べている。

「では、ここでどのような作戦をおこなって、どう対処したのか説明なさってもらえますか?」

一応視察という事なので、ロナ様が真面目な口調でカラチ達と共に現場検証を行うが、

「まず、塩湖から塩の塊を切っては運び切っては運びで、ドドーンと街道へ繋がる道に壁のように積んでいったんや⋯です」

「うちのトロールを数体呼んで、運んだり順番に壁みたいに積んでもらったんや。

いやあ、相手に気付かれへんようにするのに苦労したわ〜」

「オレは積んだ塩に水をかけたりして固めたりした後、そこの道の影に暗くなってきてから隠れた⋯です」

それぞれの言葉に耳を傾け、メモを取っていく。

「なるほど、それぞれ役割を分けて作業を行ったのですね。それで」

ロナ様は塩湖のふもとの小屋からの横道に移動し、

「闇ギルドの面々は皆ヤケドや負傷した者ばかりだったのですが、どうして小屋が燃えたのですか?

こんなに道路が黒焦げなのですか?

その事と何か関係が?」

そう問われて、カラチの肩がビクッとなる。

「そ、それは⋯暗くなってきて⋯それで」

「小屋の扉が開いたタイミングで、カラチお手製の爆弾を何発か小屋の中に放り込んだんや」

「こらジャララ!

ワテが説明しとるのに横からしゃしゃり出るな!」

「しどろもどろやないか。

ここはちゃんと説明せなアカンで〜」

「んで、小屋から脱出してきた何人かが横道に逃げていく所にまた爆弾を放り込んで」

「アトル〜、説明させてえな」

(トリオ漫才だな⋯)

そのやり取りを見ていた俺は心の中でそう思っていた。

「フフッ」

3人の話を聴いていたロナ様も面白かったのか、ここで初めて声を出して笑っているようだ。

「そや!

真面目に話さんと!

ワテら笑いを取るために話してるんとちゃうんや!」

「そだね。

まず日が落ちて暗くなってきていたんで、アイツらが持っていたランプをカラチが弓矢で落としてからジャララがトロールを大量に呼んで戦わせて、次々とはっ倒して⋯ぶっ倒して」

言い換えているけれど、はっ倒すもぶっ倒すもほぼ同じ意味だと思うよアトル。

「闇に隠れながら近付いたカラチが、ギルドマスターと一騎打ちの状態になって、ちょっとピンチな所に隠れて待機していたオレ⋯ぼく?

がマスターの横っ腹に斧の横を当ててぶっ飛ばして戦闘終了!

ってなりました」

雑だけどちゃんと伝わった⋯と思うぞアトル!

「なるほど⋯」

そこまで聴きながらメモを取っていたロナ様。

ふと顔を上げつつメガネを直しながら、

「それで、あなた方はギルドで待機していたのは何故ですか?」

ロナ様に質問されたが、

眠らされたとは言いにくく、

どう答えようかと考えていると、

「私達はもしもの襲撃に備えていたんです。

闇ギルドとは先日一悶着を起こしてしまって、逆恨みを買ってしまったので、こちらに襲撃してくるのではないか、と、こちらもそれに対応していたので」

「なるほど、前は任せた、後ろは俺達が守る。と。

後方支援を行ったという訳ですね。

皆様のチームワークがうかがえますね。ありがとうございます」

旭さんのフォローによって、

なんとか説明が出来た。

「さて⋯では以上で質疑と視察は終了といたします」

ロナ様はこちらにお辞儀をしてから、

「では、街までお送りいたしますわ。それから今後のご予定をたてましょ?」

やはり一緒に旅に出る気満々だ!

俺達はギルドに戻ってから、どうやってロナ様に気付かれずに内緒で旅立つかを相談し合うのだった。




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