第45話 魔物の情報を得る為ならたとえ火の中水の中

馬車から外に出て、前方にいる魔物が数体道を塞ぎながらこちらを見つつ、武器を構える。

馭者のおじさんは馬をなだめつつ、戦闘に巻き込まれないように少し後ろに下がって様子を見守っている中、執事さんが剣を構えて馬車の前に立って護衛するみたいだ。

「危ないので下がっていてください!」

「いえ、ご心配無用ですぞ。

私もお嬢様と馬車を守りますぞ」

執事さんはそう言いながら細身の剣でフェンシングの構えを見せる。そういうファイティングスタイル、というか構えの流派なのだろう。

「分かりました。無理しないでください!」

俺達も執事さんの前に立ち、魔物との距離を図りながら攻撃に備える。

「こいつら、オークや!

武器を使ってくるから気をつけてや!」

カラチが魔物の特徴を教えつつ後方で弓を構え引く。

カラチが矢を放つと同時に戦闘が開始となる。

まず、斧を持ったオークがアトルに迫ってくる。

アトルは直線的な攻撃をかわしながらオークに斧を降ろして殴り倒す。

「グエッ!」

両刃では無い斧なので、硬い部分を当てられている上にドワーフの腕力もあって気絶どころの痛みでは無いだろう。

倒れたオークを踏みつけ、別のオークが雄叫びを上げながら手斧を振り回す。

「なるほど、オークは多数で群れるが仲間意識は薄い⋯と」

ん?

馬車から声が⋯って、

「ロナ様!?

何をやっているんですか!

危ないから早く馬車に戻って下さい!」

俺は馬車から出ていたロナ様を見つけて、つい大声で注意してしまう。

「大丈夫ですわ。

自分の身は自分で守ると伝えましたでしょう?

わたくしも、戦いましてよ!」

そう言うと、執事さんと同じくレイピアを持ち構えて馬車の横に立つ。

さすがに長い髪をひとつに束ね、ロングスカートからパンツスーツに歩きやすい靴へと履き替えていて、戦いやすいスタイルになっている。

「旭さん、だ、大丈夫なの?アレ」

「⋯なるべくあっちにオークを寄せ付けないように手前で抑えましょ!」

そう言いながら旭さんがオークの後衛に向かって火炎魔法を放つ。

カラチがそこに向かって爆薬を投げて攻撃に追い討ちをかける!

ドンドンドン!

爆音と共にオークが爆風で跳ね上がる!

跳ね上がったオークに向かってカラチが矢を放ち、次々命中させていく。

最後に俺とアトルでオークにとどめを刺していき、なんとか馬車に近付けずにオークを全部倒した。

俺が額の汗を拭いながら、

「ふう⋯みんな大丈夫か?」

そう皆に声をかけると、

「大丈夫。ケガは無いで〜」

どこから連れてきたのかは分からないが、トロールの肩に乗っかったジャララさんが、ひょっこり街道沿いの壁から飛び出てきた。

「おま⋯姿が見えへんと思うとったらそこに隠れてたんか」

カラチが呆れながら呟く。

「だあって〜、補助魔法以外役に立てへんやも〜ん」

ただ単にサボっていたんじゃないんだろうか⋯。

「さて、塩湖まてもう少しですぞ。皆様馬車にお戻りに⋯お嬢様!

オークからお離れになさってください!」

「あらもう出発ですの?

分かりましたわ」

そう言いながらロナ様がいそいそと馬車に乗り込む。

乗り込むのを確認していると、何かをポロリと落としたので俺が拾うと、

「⋯メジャー?」

多分どこからか調達したのであろう、ポケットに入る位の小さめの巻き尺だった。

(オークの身長とかを測っていた⋯んだろうなあ多分)

フウッとため息をつきながら俺達も馬車に乗り、塩湖に向かってまた発車し出すのだった。

馬車内に入ると、

「フフフ⋯オークの情報がこれでまとまりますわ⋯」

と、不敵な笑みを浮かべながらロナ様がメモ帳にたくさん書きつづっていた。

「この人、実は魔物の調査でワテらに付いてこようと思っとるんやろか?」

「一緒に⋯遠慮したい」

カラチの質問に、ボソッと本音が零れる俺だった。

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