第38話 仕組まれた罠

室内で爆弾が爆発し、辺り一面には血を流し、倒れている手下達が横たわっているのがギルドマスターの目に入ってくる。

「なん⋯だこりゃ!?

おいっ!誰か返事をしろ!」

だが返ってくるのは痛みによるうめき声と悲鳴ばかりだ。

「か、頭⋯」

「腕⋯痛え⋯」

一体誰がこんな事を?

日頃から恨まれる事ばかりしていたのだが、爆弾を作る技術のある奴に恨まれる心当たりは無い。

「とにかく一旦外に出るぞ!

無事なヤツは俺と一緒に来い!」

そう言いながら手持ちランプに火を入れて、入口の扉を開けると、

「か、壁?」

月明かりの中、ギルドの周りを囲むように石の壁が建っている。

そしてそれは誘導でもするように一方方向にしか進めないよう建てられている。

「お、お頭、これは!?」

「街道への道が壁で塞がれている!?」

「お前ら、この壁を壊せ!」

「へ、ヘイッ!」

ギルドからハンマーを持ち出し叩いてみるが、

「お頭!これ何重にもなっていて固すぎて通路が開かねえ!」

マスターはチッと舌打ちをし、

「しゃあねえ、相手の術中にハマるのはしゃくさわるが、こっちに行くぞ!」

と叫ぶと、唯一通れる細道へと一同向かっていく。

ヒュッ

空を切る音と共に、後方へまた爆弾が数個投げられ、爆風と爆音と炎がギルドメンバーを襲う。

「うわっ!」

「熱い⋯痛え⋯」

「骨が⋯歩けねえ⋯」

マスターが後ろを振り返らずに、

「早く逃げるぞ!

もう少し行ったら大きい道に出るからな!」

そう言いながら走って細道を突っ切ろうとしたが、

「な、何でトロールがここにいるんだ!?」

「しかも1、2⋯かなり多いぞ!」

前方に大柄なトロールが10体、マスター達を待ち構えるかのように立っている。

「こんな数⋯まさか、ジャララか?

あいつ、裏切りやがったな!」

元々別のギルドからの斡旋あっせんでカラチ暗殺を依頼していたが、途中から何も連絡してこなくなったのでカラチに殺られたとマスターが勝手に思っていたが、

ジャララのスキル『魔物使役テイマー』を教えられていたマスターはトロール達を見てすぐに察する。

ヒュッ

「痛っ」

風を切る音がしてランプを持っていた男の手が誰かに矢で射った。

地面に足元しか見えなくなった時、

「ヴォォォォー!」

トロールが吠えると、一斉に襲いかかった!

「ぐはっ!」

「くっ!剣が⋯折れ⋯固すぎる!」

「何も効かない!

強すぎる!」

闇ギルドの面々が一網打尽にやられていく。

「何で⋯こんな⋯事に⋯」

ギルドマスターが呆然とした表情で呟く。

「痛えっ!」

さらに男達から悲鳴が上がる。

何かを切る音が聞こえて、マスターが短剣を構えると、

キィーン!

金属音がして誰かの攻撃を阻止したようだ。

「カラチ⋯か?」

「よう凌いだなあ。さすがマスターや」

黒いフード付きの服を着たカラチが短剣を構えながらマスターの前に立っている。

「裏切って闇討ちか?

それとも闇ギルドでも仕切ろうとしてえのか?」

「裏切りとちゃう。

ギルドを抜け出せずフラフラして周りに迷惑かけとる自分に決着を着けたいだけや!」

そう言いカラチが踏み込みマスターに切りかかるが、マスターも良い腕前を持っていてそれを防ぎながらカウンター攻撃を放つ。

一進一退の攻防戦。

傍から見ていても中々の戦いだとすぐ分かる。

体力差からか、カラチが少しひるんだ拍子にマスターが一撃を放つ!

が、

「よっと!」

どこからか参戦していたアトルが、斧の柄でマスターの腹部を叩き飛ばす!

「なっ⋯卑怯⋯」

蓄積されていたダメージの影響で、さすがのマスターも膝を付き倒れる結果となった。

「卑怯?

人の事言えるんかいな」

「よっしゃ!」

「計画通り!」

サムズアップのポーズでアトルとジャララがニコッと笑う。

「まあ、これで闇ギルドは解体決定やろうな。皆、おおきにな」

最後にカラチがジャララとアトルに労いの言葉をかけて、3人でグータッチをしてから塩の街の役人に報告をしに行くのだった。


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