第7話 職業試験6

刀を振る。その度にモンスターの断末魔が聞こえる。

「歯ごたえねえな、まあ量がいるから良いだろ!」


45分経過。上位狂戦士鬼人ハイベルセルクオーガはその数とそれまでとは一線を画すステータスによってプレイヤーを瞬殺していていたが、本気を出している時鳥には届かなかった。しかし流石の時鳥でも全員を撃破することはできなかった。新しく出てきたモンスターは、上位狂戦士ハイベルセルク鳥人バーディアン。現<武帝>ファルはこの時点で敗北を確信し、撃破を諦め回避に専念しようとしたが、数十秒でやられてしまった。しかし時鳥にはそれでも届かない。


「毒解禁!流石に!オラアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」

刀に瓶を乗せるという神業で、自分を中心に半径30mに毒を散布。弱った敵をそのAGIで殲滅していく。

3分30秒後、上位狂戦士鬼人ハイベルセルクオーガは全滅。上位狂戦士ハイベルセルク鳥人バーディアンも半数以上が死亡、全員がダメージを負っていた。


50分経過。鳥人は最初の四分の一程の量まで減ってしまっていた。出現したのは上位狂戦士ハイベルセルク狼人ウルフマン。その内の四分の一の元に、鳥人が降り立つ。


次の瞬間、その二種類のモンスターは融合した。

上位狂戦士ハイベルセルク融合怪物アーティフィメラン。鳥の翼を持ち、狼の嗅覚を持つモンスター。実はこのモンスターはである。耐久力はLv.99Limitedのプレイヤー並み、AGIもそれと同様。飛行もするので、一対一では勝てたとしても多対一では勝てるはずがないだろう...というモンスター。隠れたとしてもその優れた嗅覚ですぐに見つけられてしまう。攻略勢の中でもトップクラスのステータスを持ったプレイヤーはこの融合怪物アーティフィメランに遭遇している。何が言いたいのかというと、この時点でこの数と戦って勝利できるようなプレイヤーは今までいなかったということだ。


というか、ここまで辿り着けたものなど時鳥以外にはいない。彼は進行形で記録を塗り替えている。

観戦をしているプレイヤーたち、つまり海鳥と死神、そして死神に呼ばれた<武帝>、ファル・アルカディアも、彼のその才能に驚いている。海鳥に関しては、よくその速度で目が回らないな、という意味で。残りの二人に関してはどんな鍛錬をリアルで重ねればあのような動きができるのか、という意味で。

勿論融合怪物アーティフィメランに遭遇したことのあるこの三人は、あれに勝つようなことはできないだろうとは思っていたが。


しかし本気を出した時鳥には、これでも届かなかった。


「!? なんで一撃で倒せているんだ!?」

「毒での耐久力の低下?いや、あれは毒なんて効かないわよね...」

「ファルさんクラスの二倍くらいだったら有り得るかも...って!? まさか!?」


全員は気づいてしまった。

時鳥は、レベルをカンストさせたのである。

そして、AGIに全振りしたときから貯まっていたステータスポイントをATKに全振り。


今の彼にAGIとATKにおいて敵うプレイヤーはいない。

文字通り、世界最強の男が誕生したのであった。


運営は、泣いている。

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