第84話 一問一答
問.ここから脱出する方法。
解.サタンによる転移。
問.それ以外の脱出方法。
解.魔界の崩壊。
問.魔界を崩壊させるには?
解.魔神サタンの死亡。もしくは封印。もしくは弱体化。
問.魔神サタンを殺すには?
解.神格を奪い、その後殺害。
問.神格を奪う方法。
解.神の力、もしくはその
問.神の
解.天使、神官、修道士、神父、聖騎士、聖楽家、信託者、武闘家。
解.聖なる力とは?
答.【
問.それらの力を使えるものは近くにいる?
解.肯定。
問.どこにいる?
解.大気中に存在を溶かして隠れている。
問.呼び出す方法。
解.アベル・フィード・オファリングに命の危機が訪れる時に現れる。
問.それは、閻魔の時に現れたモモ?
解.外見に関しては肯定。根源存在については否定。
問.そのモモはなんなの?
解.魔神サタンの作り出したアベル・フィード・オファリングを護るための装置。
問.なぜモモの外見を?
解.天文学的な確率での一致。アベル・フィード・オファリングの遺伝子に最も適合した最適解の女体を作り出したら、たまたまモモという人物と合致しただけ。
問.遺伝子?
解.特性。子をなした際に世代間で伝わる特性のこと。
問.え、オレとモモが相性抜群ってこと?
解.肯定。現時点で二人の間にはとても優秀な子供が生まれる可能性が高いと考えられる。
問.えと、話を戻してっと……そもそも、サタンはなぜオレを護る?
解.大悪魔のダンジョンに落ちた際に魔神サタンに興味を持たれたため。
問.なぜオレに興味を?
解.魔物を仲間に引き連れている鑑定士が珍しかったから。
問.珍しいとは? なぜ他の鑑定士と比べられる?
解.鑑定士は神と魔神から常に注目を浴びているから。
問.なぜ注目を浴びる?
解.神と魔神で行っているゲームのコマだから。
問.コマ? ゲームとは?
解.一万五千八百十六年前より始まった神と魔神の間で行われている代理戦争。百年に一度人間界に誕生する鑑定士を観測し、魔界と天界、どちらに多大な打撃を与えるかで勝敗を決するゲーム。両者は互いに人間界に生まれた鑑定士を探し出すことから勝負を始める。よって人間界、特に人口の多いところには人間に擬態した天使や魔物が多く潜み、百年にひとり生まれる鑑定士を探している。
問.じゃあ、もしかして職業を授かる冒険者ギルドって……。
解.肯定。天使、魔物。どちらにも通じている。
問.なぜ、オレがその鑑定士なんだ?
解.完全に偶然。鑑定士という職業は、いつ、どんな種族に、どのような形で宿るのかは神にも魔神にもわからない。それでこそ平等なゲームたり得る。
問.オレが鑑定士になったのは完全な偶然?
解.肯定。
問.ネビルとオレで鑑定士としての能力に違いがあったのは?
解.鑑定士の能力は、常にそれ以前のゲームの結果を踏まえて調整を加えられ続けている。ネビルの時の【弱点看破】は、あまりにも強力すぎたので、次回以降は封じられている。
問.調整を加えているのは誰?
解.神や魔神を超えし超常の存在。
問.超常の存在とは?
解.答えることは可能だが、その瞬間に、この世界は消滅し作り変えられる。それでも問うか?
問.いや、問わない。『この世界』ということは、他の世界もある?
解.あるといえばある。ないといえばない。世界は観測されて初めて存在を獲得する。
問.意味がわからない。もっと簡単に言えない?
解.不可能。この世界の言語において最も簡単な伝え方をしている。
問.そもそも、天界と魔界はなぜ対立している?
解.サタンが堕天したから。
問.サタンが天界に
解.否定。もはや両者の対立は世界を維持するシステム構造として確立している。もはやサタンが
問.天界と魔界の対立が終われば、鑑定士のコマとしての役目も終わる?
解.おそらくは肯定。
問.天界と魔界の対立を終わらせる最も可能性の高い方法を教えて。
解.どちらかの陣営が滅ぶ。または、超常の存在に訴える。
問.話を戻す。オレたち全員が無事にここから脱出することは可能?
解.可能。
問.テスの制限時間を半永久的に止めておくことは可能?
解.可能。
問.その方法は?
解.時間の概念を超越した空間で生まれしものの影響を常に受けるようにする。
問.具体的には?
問.この場にあるものを身に着けておく。
問.偽モモとの一体化とは?
解.空間に溶け込むことの出来る存在ゆえ、特定の物質に溶け込むことも可能。ただし、あまり長い時間一体化していると定着してしまい、分離できなくなる。
問.一体化のデメリットは?
解.肉体の成長が止まる。
問.それだけ?
解.肯定。時間からの干渉を受けなくなるため、寿命という概念もなくなる。しかし、肉体自体は存在しているのだから傷を受ければ死ぬ。ただ、肉体の成長が止まり永遠の寿命を得るだけ。
問.どうやったら偽モモをテスに一体化させられる?
解.アベル・フィード・オファリングが命じればいいだけ。彼女は、対象を護るためにある。なので必要とあれば行動する。
問.サタンに命令を上書きされない?
解.される。
問.サタンに命令を上書きされる前に、声が聞こえない場所までテスを移動させれば上書きを防げたりしない?
解.肯定。問題は一体化したテスの「耳に声が入らなければいい」ということ。
問.スキル【
解.相対する事象に対し、悪がかならず勝つように働くスキル。
問.スキル【
解.絶対的な悪に染まるスキル。悪の概念は、周囲の対象の持つ「善」との比較によって決められる。
問.スキル【
解.スキルは繰り返し使うことによって使用者への影響を高め、定着させる傾向にある。ただし、魔物は元々その個体に合ったスキルを持って生まれてくるため、影響は軽微。
問.「魔物が自分の根源となるようなスキルを奪われた場合、人間になる」という仮説は正しいのか。
解.肯定。サタンの堕天以前、世界には人種と動物しか存在しなかった。サタンが堕天し魔神となって以降、世界は二つに分断され、魔物と呼ばれるものが生まれた。つまり、全ての魔物、また亜人種は人間、もしくは動物がベースとなって作られている。よって、魔物が各種の根源となるスキルを失った場合、人間や動物へと先祖返りする可能性は十分にある。ただし、それも絶対というわけではない。
問.失ったスキルを取り戻す方法。
解.状態回復によってスキルを取り戻すことが出来る。具体的な方法としては
問.スキルを取り戻した元魔物は、再び魔物に戻るのか。
解.ケースバイケース。先祖返りした状態で長く過ごした場合、そちらの状態に魂が固定され、変異しないケースもある。また、本人の意志で拒否できるケースもある。
問.魔物はすべてサタンが作り出しているのか。
解.肯定。ただし、サタンが作り出すのは「原種」だけであり、産み落とされてからの魔物は独自の繁殖、進化を遂げることとなる。
問.サタンが死んだら魔界はどうなるのか。
解.新たな原種が生まれなくなり、地上の魔界全体の魔素も薄くなる。その結果、魔物たちは長い年月を経て弱体化していき、人間界と差異がほとんど無くなる。
問.サタンが死んだら神と魔神の間で行われてるゲームは神の勝利となるのか。
解.肯定。
問.ゲームが終わった時に考えられる人間および魔物への影響。
解.神の勝利で終わった場合、魔界は神に統治され、魔物たちは全て消滅する。
問.サタンが勝ったら逆に人間が消える?
解.肯定。
問.人間、魔物以外に関する影響は?
解.世界自体が作り変えられる可能性がある。
問.作り変えるのは、さっき言ってた超常の存在?
解.肯定。
問.サタンに気づかれず質問できる数は、あといくつ?
解.三つ。
問.プロテムの職業特性【
解.命をかけて信念を貫き通した時、奇跡を起こすことが出来る。
問.【
解.肯定。
問.オレが今、頭で思い描いている脱出計画が成功する確率は?
解.85%。
サタンの声が耳に入ってくる。
「…………だ。低俗な存在の貴様らには理解出来ぬだろうが、この世にはそういった空間があるということをなんとなく心に留めておけばよい。低俗な羽虫は羽虫らしくな。で、他に質問は? おっと、もちろん誰かの命と引換えだがな、くくくく……」
どうやら長々と喋ってくれていたようだ。
おかげで、かなりの情報を得ることが出来た。
そして。
その隙にオレは描いたぞ──必勝の絵図を。
「いや、もう質問はいい」
「……なに?」
「情報と引き換えに命を捧げろだなんて、そんなくだらない取り引きを続ける気はないんでね」
「くだらない……? 私の提案をくだらないと言ったか……? この魔神サタンの提案を……」
ビキビキビキ──!
大きなラップ音が鳴り響くと、褐色の長髪イケメンだったサタンが、見るも
オレは、その姿に一瞬たじろぐも、すぐさま気を取り直す。
「サタン、貴様の脅しに屈するくらいなら! オレは、今ここで命を
魔鋭刀をダガーへと変えて逆手に持つと、オレは自分の喉めがけて思いっきり振り下ろした。
「なっ──! フィード!?」
「お兄ちゃん!?」
「フィード!」
ガッ──。
しかし、その切っ先は、大気中から具現化した偽モモがすんでのところで手で受け止める。
「はは……よかった、ちゃんと出てきてくれた……。本気で刺すつもりだったからな……さすがに、ちょっとビビってたぜ……」
オレは、そう冗談めかして口にしたものの、内心本気でハラハラしていた。
【
なんにしろ、偽モモは現れた。
オレの命を救うという魔神サタンからの命令を忠実に執行するために。
オレは、一ヶ月ぶりに見るモモの横顔を見つめながらホッと胸をなでおろす。
「対象の自害の運命を上書き完了。対象の無事を確認。監視にもど……」
閻魔の時と同じ言葉。
だが、せっかく無理やり具現化してきてもらったんだ。
このまま大気中に消えられる訳にはいかない。
「待てよ、偽モモ」
「偽モモ? それは私のことか? 対象・アベル・フィード・オファリング?」
相変わらず無表情なまま、偽モモはこちらを振り返る。
「そうだ。いいか偽モモ? 今すぐサタンからの命令権限をオレの命令権限で上書きしろ。でなければ、オレはお前でも止められない方法で絶対確実に自害する」
「……は? 貴様、一体なにを言って……」
まだオレの言ってることの意図が読めない様子のサタン。
サタン、一万何千年……だっけ?
そんなに長い間、時の停滞したこの場所で鑑定士をコマ扱いして上から目線で見下してきたんだろ?
そのせいで、ちょっとぼんやりしすぎてるんじゃないのか?
お前よりも大悪魔の方が、閻魔の方が、よっぽと手強かったぞ。
「対象の命令を受理。私、固有名『偽モモ』は、魔神サタンの命令系統下から離脱。アベル・フィード・オファリングの指揮下に入る」
「なっ──!」
魔神サタン、まだ気づかないのか?
お前は、
【
オレの右目に宿った赤い炎が、偽モモのステータスを看破する。
名前:偽モモ
種族:アベル・フィード・オファリングの守護者
レベル:99
体力:9999
魔力:9999
スキル:【
オレだけが知ってるモモの秘密。
モモは、職業を得る前からスキルを使えた。
だから、同じ姿形の偽モモならばと微かに思ってはいたが、【
そして、この【
はは……まさかこんな魔界の果ての果てでまでモモの助けを借りることになるとはな……。
こりゃあ、なおのこと絶対に生きて戻ってモモに直接礼を言わなきゃだ。
ということで。
スッ。
オレは魔神サタンを見据え、指を差す。
「偽モモ! 魔神サタンの神格を奪い取れ!」
「命令を受諾。これより、魔神サタンの神格を奪い取る」
「はぁ!? 貴様……私に逆らう、だとぉ!?」
本物のモモよりもはるかに高性能そうなレザーアーマーに身を包んだ偽モモ──オレの守護者は、両の拳に聖なる力を宿らせると魔界を作り出した神、サタンへと向かって駆け出した。
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