あめ
日本語破綻者
第1話あめ
雨が降っている。土砂降りの雨だ。こんな豪雨ならば傘など何の意味も持たない。が、それでも雨を避けて避難ぐらいはするであろう。
だが僕は……土砂降りのやまない雨の中、膝をつき、両手を広げただただ激しい雨を受け止めていた。
僕は全てを失ってしまった。何もかもだ。
思えば何の変哲もない毎日。それがいかにどれほど幸せだったのだろうか。その中にいるとき、人間はその価値、ありがたみに気づかない。気づけない。いや気づこうとしない。
もう戻れない。失ったものはあまりにも多すぎた。
やがて雨は上がった。
雨は僕の罪を流してくれただろうか。
なけなしの生活費と全財産をギャンブルに当てた僕の罪を。
「なあ、あいつ人工雨体験で何やってんだろうな」
「さあな、演劇の練習でもしてるんじゃないか?」
施設の部屋の窓から覗き込んでいる一般人がなにか言っていたような気がしたが、サル共の言葉は僕の耳には届くことはなかった。
あめ 日本語破綻者 @mojiuchisyuukann
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