第3話

私たちは今、葬儀社にいる。


自分の告別式の打ち合わせに参加するだなんて、なんとも奇妙だけれど、

彼とあの子が並んで座るその隣に、一応、私も座ってみた。


私の前にだけ、お茶がないこの光景に、

私は、もう、この世のものではなくなってしまったのだと実感させられた。


祭壇や棺、骨壷、花、返礼品。

告別式に必要なもの一式が揃ったカタログを見つめながら、

膝の上に置いてある手をギュッと握りしめている彼を、私は見逃さなかった。


『こんなことさせちゃって、ごめんね。デザインなんて、こだわらなくていいよ。

パパッと決めてさ、早く帰って、ゆっくり休みなよ。』


伝わらないことを知りながら、

彼に伝えたいことを、一方的に伝えることしか出来なかった。


式場の予約と祭壇などのデザインを決めると、プランナーさんは言った。


「今日はこの辺にしておきましょう。

お疲れだと思いますので、今日はゆっくりお休みになってくださいね。」


翌日の打ち合わせ時間を決めると、

後日、遺影に使う写真を持ってきてほしいと伝えられ、

ようやく我が家へと帰宅した。


私の告別式は、4日後に決まった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る