◆黒の痕跡①◆

激しい嘔吐と

逆流してくる吐瀉物に

息がつまりそうになりながら

ダラダラと流れ続ける冷や汗

冷たくなる手足


いっそ意識を手放してしまいたいのに

苦しさがそれを許してくれない


こんな時にはただもう

タスケテ、とラクにしての

言葉だけが思考を埋めるばかり

イキガクルシイ


先人たちはこんなにも苦しみ抜いて死の扉をくぐったのか



ニンゲンなんて弱いものだ

少なくともわたしは

こんなにも脆く弱い


鼻水と反吐まみれになりながら

みっともない姿を晒し続けた



何とか永遠にも思える

苦痛の時が過ぎて



痛くないこと

苦しくないこと

息ができること

吐き気がおさまってきたこと


それだけでもう

どれだけ有難いことなのかと

思う


偉そうなことなんて言えやしない

ここに居るのはただの俗物



何とか立ち上がって

点滴台を転がしながら

トイレにいけるようになった


まだ未定だけれど

近々退院はできると思う

沢山の飲み薬、目薬、

インシュリン

また病院受診の日々は

よろりよろりと

続くけれど生きている

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