おこのみやき

日本語破綻者

第1話おこのみやき

「というわけで国民の皆さんにお好み焼きを配ろうと思います」

「総理! 正気ですか? 何故そのような愚策を」

「愚策とはなんだ。愚策とは」

 総理大臣は野党の議員にどなった。

 なぜこのような事になったのだろうか。

 お笑い芸人から議員当選を果たし、総理大臣になった浅井 考。

 彼はお笑い界で伝説と呼ばれていた。しかし突如として電撃引退、そして鳴り物入りの政界入り。そして今にいたる。総理は至って真面目にお好み焼きを配ろうとしている。何の疑いもなく。支持率は驚異の80%である。彼の話術は今もって健在でどんな政策を打ち出しても得意の話術で納得させているのである。しかしさすがに今回ばかりは逆風が吹く。が、総理は実は催眠術の持ち主でもあったのだ。しかしそれは無自覚であり、そこがさらに恐ろしいところでもあった。

「お好み焼きだぞ。みんな好きだろ。飢えも無くなる。万事解決だ。子育て世代にもよろしかろう。食べると元気が出るからな」

「ええ……言われてみれば?」

 野党の議員も総理の催眠術の術にかかり納得した。

 そうしてあれよあれよと、お好み焼きを全国民に配る事が決定した。

「お好み焼きの具材は各自選択制である」

 書類に乗せたい具材などの選択肢を選んで提出すればお好み焼きが各家に届く。

「どんな具材のリクエストもなるべくなら答えるように。なぜならばお好み焼きというのは何を乗せても良いのだ。好きなものをな。だからこそのお好み焼きなのだから」

 総理はそんなある日、呼び出された。

「なんだ。何か用か」

「はあっ。総理には一緒に来てもらいたいのです」

「どこにだ」

「えっと配給センターですね」

「なぜだ」

「お好み焼きの具材に総理を希望される方が殺到されまして。総理は人気ですから。総理を食べたいとの声が多数なので」

「うむ。じゃあ私が具材として乗るというわけだな」

「ええ……」

「分かった……」

 総理は腹をくくって国民に食べられました。ってことはなく、恐怖を感じた総理は辞任しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おこのみやき 日本語破綻者 @mojiuchisyuukann

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る