魔王のヒミツ
「アイリーン殿! 気は確かか!?」
「至って正気よ。考えてもみなさいな、冒険者としては一般人レベルだったかなたっしゅがSランクに匹敵する力になってるのよ?」
「そ、それは」
「その秘密を探るためにもまずは懐に飛び込んでみないと!」
「何を要求されるかわかりませんよ!」
「じゃああんた、あたしのパワーをあげてくれるっていうの?」
「そんな無茶な!」
二人の言い争いをよそに考えをまとめる。
魔力値が1万以上という条件であるならカナタの数値は3万近くだ。Sランクの条件を満たしている。
『マスター。この幼女意味わかんないです。魔力数値は10万くらいで、ボクたちにはかなうわけもないのですが……あの時の呪文、防ぎきれるかは半々でした』
「うーん、ヤバい気配がビリビリ来てたよなあ」
『そうなのです。瞬間的にですがボクたちのレベルにまで達しようとしてたのですよ。さらに解せないのは手下Aの攻撃でそれだけの威力が霧散したことなのです』
「手下Aてカナタのことか……?」
『他に誰がいるのですか?』
「そこまで間違っちゃいないが、この会話筒抜けだってわかってるか?」
『ふふーん……あ! チャンネル遮断するの忘れてました!?』
ふと隣を見ると……カナタが空中に「の」の字を書いていじけていた。
「どうせ私は手下Aですよーだ」
取りあえず疑問は解消すべきだ。
「ところでアイリーンさん。ちょいと聞きたいんだがね」
クガネ氏と言い争っているアイリーンに声をかける。
「ええ、なにかな? 3サイズはね」
「聞いてねえ」
「ぷー、まあ、真面目に聞いてるみたいだから答えるよ。なに?」
「あんたの力ってどこから来てるんだ?」
「ふふーん。あたしはね、龍王の血を引いているのさ」
「ああ、呪文にもあったな」
「それとね、誓約の力よね」
「それは具体的にはどういうもんなんだ?」
「ふふーん。力に制限をかけることでね、特定の条件を満たした時には莫大な力を得るのよ」
「ふむ、なるほど」
いくつか分かった。推測だがその誓約とやらにうちの手下Aが含まれているんだろう。
『朋友を~とか呪文にありましたしね。そういうことでしょ』
「えーとね。一方的になんですけども……」
「うん?」
「誓約の対象にされてまして、はい」
「ふむ」
「えーっとですね。リーンは、私に危害を加えられないんです。それで私を守る時には力が数倍になるらしく。その条件は事実関係は関係なくて、彼女がそう思えば成立するの」
「あー、そういうことか。カナタが俺になんかされたと思ったわけだ」
「そういうことかと」
「ってことはお前さんの攻撃が入ったのって……?」
「おそらく想像通りです。彼女の魔力は私に対して力を失うんです」
『あー、だいぶ思い切った内容ですねこれ。要するに……手下Aを天敵にすることでパワーの振れ幅大幅に上げてるってことですよ』
「愛されてるなあ」
「そういう問題じゃなーーーーい!」
「要するにだ、君に対しては完全に無防備ってことだろう?」
「そう、ですけど……」
なるほど、アイリーンからすればカナタが敵に回ることは避けたい。感情面もそうだが実利面でも、だ。何しろどれほどの魔力を使いこなしてもカナタが出てくれば一般人以下の戦力になる。逆にカナタと敵対する相手がいるならその敵から守るということで、その力が数倍になる。
『ここは受諾一択でしょう。マスター』
「だよ、なあ」
「ぴいいいいい」
カナタが情けない声をあげている。何やら少し震えているがそこはあえてスルーした。
「で、どうかな? 機械文明の魔王様」
「へ!?」
思いもよらない呼ばれ方をする。
『あー、龍の力を継いだあちらさんの力で魔王ならボクたちは大魔王ですねー、あははー』
「……龍族と機械兵器たちの対立は知っているんだろう?」
「ええ、もちろんよ。けどね、あたしは大事なものを守りたい。そのためならすべてをなげうつ覚悟がある。そういうこと」
「リーン……なんでそこまで?」
カナタが泣きそうな顔でアイリーンを見ている。幼女魔王はニパッと無邪気な笑みを浮かべた。
「だって、君だけじゃないか。あたしがアイリーンって知ってそれでも変わらずにいてくれたじゃない」
「え……」
「この強すぎる力はあたしを守ってくれたけど、けどねすべてを遠ざけたの」
「リーン……」
「ってのは建前で―」
ニヤリとした笑みを浮かべる幼女らしくない表情。
「え?」
体内の魔力が集約されて行く。だが敵意は感じない。攻撃魔法ではない?
「かなたっしゅがドストライクの好みだったからよー」
「え? いやいやいやいや、わたし幼女趣味は無いんですけどー!?」
「ふふふ、ドラゴンはね。雌雄同体なのさ。だからこんなこともできるんだよ」
体内の魔力が一点に集中し、そこから再度放出される。
『ほへー、なるほど。魔力で細胞単位から身体を構築してるんですねー。あのコアが破壊されない限り不死身と。めもめも』
「フフフ、この姿ならどうだい? 子猫ちゃん」
そこにはぶん殴りたくなるほどの長身イケメンの魔王様がいた。銀の髪と深紅の瞳はそのままに、俺と同年代くらいの男の姿になってカナタを抱き寄せている。
「いいいいいいいいいいやああああああああああああああああああああああ!!!!!」
本日一番の絶叫が飛び出した。
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