不時着キキョウ便 2
「そもそもその前提が意味わかんないんだが、青園が好きなのは俺じゃ無くて鬼灯って奴だぞ?」
鬼灯がスタッフルームから出てきたタイミングで川波はそう言った。
「一体、何を言ってるのかしら?」
「鬼灯さん!」
私がそう呼ばれたのに気付いて川波は眼を見開いた。
「え!? あー、いや通りで何処かで見た記憶が。弟さん? と良く似て美人ですね?」
川波はあからさまに動揺した様子で私にそう言ってきた?
「私は1人っ子よ」
「「は?」」
町田と川波はそう同時に発した。
「な、何言ってるんですか? だったらこの人の言う鬼灯さんって誰なんですか?」
「……私の事よ、俺が正真正銘、鬼灯木那覇。性別は男だ。青園ちゃんには言わないように伝えてたんだよ。黙ってて悪かったわね」
一瞬、自己紹介の時だけ地声に戻して2人に秘密を明かした。
「え!? じゃあ本当に男性なんですね? まぁ、私にとっては別にどっちでも良いんですけど」
「そう、ありがとう。で、さっきの話詳しく教えて下さる?」
俺は町田に笑顔を向けると、一転して川波を睨む様に言った。
「詳しくって、むしろ逆に俺が聞きたいよ、何で青園が俺を好きなんて発想に至るんだ?」
「だって、あんたが居なくなった時の青園ちゃんの反応を見てれば誰だってそう思うわよ!」
そう、忘れもしない青園が高校に入って1年目の冬、
青園が突然部屋から出なくなった。
青園の母親からそう連絡が入り、俺は通ってた芸大をサボって青園家に向かった。
「おーい、どうしたんだ? 学校休むなんて珍しいじゃないか」
ノックをして話しかけるも、返事は無い。
「久しぶりに幼馴染が来てやったんだから返事くらいしろよーこの前言ってた友達の川波だっけ? あいつも心配してるんじゃないか?」
この頃は芸大の至る所から引っ張りだこで、ほとんど自分の時間が取れていなく気付けば青園に会う機会も殆ど無くなっていた。
「……駄目かぁ」
俺は仕方なしに扉から離れ、叔母さんに挨拶して青園家を後にした。
あいつ。特に塾とかも通ってないし、やっぱ学校で何か有ったんかなぁ。
「つーことで、来た訳だが」
俺は青園の通う学校の前に立っていた。学校からは友達ときゃいきゃい話しながら下校する学生がとめどなく溢れていた。
とりあえず青園の事知ってる奴を探さないとな。
と言っても、青園から以前送られてきた写真でしか知らないんだがな。
俺はポッケから写真を取り出す。写真には青園と3人の高校生が笑顔で写っていた。
男陣は茶髪のチャラそうなのと、頬に傷をつけた奴の2人で、女陣は青園の隣に写ってる子はロングの日本人らしい黒髪が1人。
とりあえずはこの3人に会えればと思ったんだが。校内に入る訳にもいかないし。
「さて、どうすっかなぁ。変装でもして忍び込むかぁ?」
「なぁ、さっきからずっとうろうろしてるが、不審者なのか?」
俺が唸りながら校門前をうろうろとしていると、顔に絆創膏を貼った男の子が怪訝な表情で話しかけてきた。
「ん? おう悪い。ってお前!」
手に持った写真と男子の顔を見比べる。
絆創膏の位置は違うが、額の傷が全く同じだった。
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