ヤドリギは芽を伸ばす 7

 私が言われたまま厨房でぼーっと壁を見つめていると、扉が開いて中城さんと四葉ちゃんが戻ってきた。


「終わったわよ」


「2人は?」


「あんたが倒れたって知ると喧しくなりそうだったからスタッフルームで仕事する様に言っといたよ」


「ありがとうございます。それで、彼の式は」


「ん? あぁここでするってよ」


「そうですか」


 安堵と心配の混じったため息が口から溢れた。


「では、私はスタッフルームの方に顔出してきますね」


「あいよ、さっさと行ってやんな」


「先輩!」


 私が扉を開けると、途端黄色い塊がぶつかってきた。


「町田さん。どうしたのいきなり」


「どうしたもこうしたも無いですよ! 倒れたんですよね!?」


「あれ、聞いてたの?」


 中城さんめ、ちゃっかりしてるんだから。


「全く。今日はもう帰りなさいね。私は明日にでも思い出の公園とやらを実際に見て来るから」


「じゃあついでに町田さんも連れてってあげて」


「「え!?」」


 綺麗にハモって私を見る2人。


「な、何で連れてくのよ!」


「そうですよ! 私は先輩と仕事したいです!」


「駄目? 良い経験かなって思ったんだけど」


 しょぼんと俯き2人に目線で上目遣い気味に訴えた。


「全く。分かった分かった連れてくから。早くそれ辞めなさい」


「はい、決定ね。町田さんも分かった? 木那乃、貴方も嫌そうな顔しない!」


「分かったってば、もう。町田さんもごめんなさいね」


「いえ! 先輩が言うなら従います!」


「貴女も大概ね。んじゃ私は青園ちゃんを送ってくから、町田さんも今日は早く帰りなさいよ?」


「町田さん。お疲れ様」


「お疲れ様です! ゆっくり休んで下さい!」


 町田に見送られ、車に乗り込む2人。


「全く、一体どういうつもりであんな事言ったのかしら?」


「せっかくだから、2人にも仲良くなって欲しくて。木那乃、私以外に友達居ないでしょ?」


「だからって、強引よ」


「私、今回の式が終わったら父親に会いに行こうかと思うの」


 運転を始めて数分、ポツリと青園は呟いた。


「そう、大丈夫なの?」


「分かんない、でも私もそろそろ乗り越えて前に進まないとかなって」


「それってどうゆう……」


 鬼灯が助手席を横目に見ると、青園は話を遮るように夢の世界へ旅立っていた。

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