ポピーはまだ覚めない 2

「いやーまさかあんたがお守りしててくれたとはな、ありがとよ」


 中城さんは私の前にコーヒーを置いてオムライスにがっつく四葉ちゃんの隣に座った。


「いえいえ、初めて中城さんと会った時以来ですよね。久しぶりに会えて楽しかったですよ。今日は保育園お休みだったんですか?」


「んや、保育園入れなくてな。普段は友人にお守り任せて家で待たせてるんだが、そいつも仕事始めて捕まんなくなっちまってな。仕方なく今日はここで大人しくさせてたんだが」


「ぼうけんひてたの!」


「そうだったんですね。あ! じゃあ今後も今日みたいに連れてきて下さい」


「いや、それは流石に悪いだろ」


「じゃあ、保育園が見つかるまで! それなら良いですよね? それとも四葉ちゃんを家に1人置いて行くんですか?」


「……あー! 分かった分かった。保育園が見つかるまで。よろしく頼む」


「それは良かった。じゃあ私はそろそろ仕事に戻りますね、コーヒーありがとうございました」


 私が席を立つと同時に厨房入口の扉が勢いよく開いた。


「中城さん、どこにも居ません! 猫なら居ました!」


「あーそれなら見つかったよ、あんがとね。それよりあんた、猫触ってないだろうね?」


「え、もふりましたけど」


 中城さんは厨房の扉をぴしゃんと閉じた。


「え、何です? 入れてくださいよ!」


「四葉は猫アレルギーなんだよ! 全身くまなく洗って出直しな!」


 まったく……と呟きながら戻って来た中城さんが椅子に座ったのを見計らって、四葉ちゃんは眠そうに眼をこすりながら膝の上によじ登り、くぅくぅと寝息をたてて寝てしまった。


「それじゃ町田さん、そろそろ宴会場の様子を見に行きましょうか」


「はぃ」


 私は厨房の外でうずくまっていじけてた町田さんを連れて宴会場へ向かった。


 私達が戻った時宴会場では友人挨拶の最中で、モニター越しに新郎新婦の友人がこれまでの思い出なんかを語っていた。


『……とまぁ、色々と語ったが、2人の仲の良さはうちがよく知っているのじゃ、精々幸せに暮らすのじゃな』


「わぁ、なんか咲ちゃんみたいな恰好してます」


「咲ちゃん?」


「私の親友です!」


 かの画面に映ってる白衣の幼女みたいな人が知り合いにいるの? 町田さんの友人関係って、いったいどうなってるのかしら。


 友人挨拶が終わると、次はケーキ入刀。大人が見上げないといけない程大きいケーキへ刃を入れる。夫婦で初の共同作業だ。


 2人の持った刃がケーキを2つに断つと、それに合わせて私達はパンパンパンッとクラッカーを鳴らし、それに続く形でお客様も鳴らしていく。


 部屋には大きな歓声が式場から溢れ出る程に響いていた。


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