第4話「赤の呪縛」
帰り道、夕日に照らされて姫菜と黒蝶が歩いている。
「いい? りんが、あたしの安全のために一緒に帰れって言ったから。
こうして帰ってるんだからね!」
「……お前さあ。もうちっと、素直になれないか?」黒蝶は少し呆れた。
「まあ、俺も乗り掛かった舟だし。聞きたい事もあるから、これから家に来いよ。」
「急になんのつもりよ」
口をとがらせる姫菜に、黒蝶は少し笑い。
「カップケーキでも、出してやるから来い」
「そっ、そこまで言うなら行ってあげる!」
◇ ◆ ◇
姫菜はカップケーキに釣られて、黒蝶のアパートに行くことになった。
LINE(ライン)で亜矢音に連絡をした後、姫菜はリビングのソファーでくつろいでいた。
木製のテーブルには、幸せそうな黒蝶の両親との家族写真が飾られていた。
(いいなあ……もし、パパとママが生きてたらこんなふうに)
思わず姫菜は、写真に見入ってしまう。目尻に涙がたまってきた。
部屋に入ってくる黒蝶の気配がして、姫菜は急いで涙をぬぐった。
「待たせたな。まあ、食えよ」
黒蝶は、丸型のトレイに紅茶とコーヒー。カップケーキを二つのせて持ってきた。
「あ、ありがと。いただきます」
姫菜はカップケーキを一口、フォークで口に運んでみた。
口の中に甘さ控えめなケーキのふんわりと、柔らかい食感と
スライスアーモンドの香ばしい香りが広がった。
「うんっ、美味しいこれ! どこのお店で買ったの?」
あまりの美味しさに頬を染め、笑顔になる。
その様子を見て黒蝶は、一瞬間があった後に頬を染め、腕を組みながら
横目でちらりと姫菜を見た。「俺が作ったんだよ。」
「え~っ? すごーい! 黒蝶、パティシエになりなよ!!」
瞳をキラキラ輝かせて思わず、身を乗り出す姫菜に黒蝶は照れながら
「いや、褒めすぎ……でもサンキュ」と素直に礼を言った。
可愛いところもあるんだなとふたりはそれぞれ、心の中で思う。
◇ ◆ ◇
カップケーキを食べ終わった後、二人は窓から見える夕日を見ながら話し始めた。
「新田から助けてくれて、ありがと。本当は嬉しかった」
「ああ。」黒蝶は嬉しそうにうなずく。
「黒蝶ってさ。魔法使いか、何かでしょ?」
ソファーの上のクマのぬいぐるみを抱きながら、姫菜はズバリと言う。
「…ああ、そうだ。お前もなのか」と聞くと。
「なんで、そう思うの」と姫菜が聞き返した。
「お前から魔法の匂いがするから」
「そっか……あんた鼻と勘が鋭いね」
二人はそれぞれ、秘密を明かした。
「あたしは、同居している姉の亜矢音も魔女で、人と魔女のハーフなの」
「ふーん、俺の方は、親父もお袋も魔法使いだよ。ここには、修行で一人で来たんだ」
「へーっ、純粋の魔法使いなんだ。しかも、一人で来た何て凄いね!」
姫菜が心底感心すると、黒蝶は嬉しそうに噴出した。
「ふはっ! お前なかなか、良いヤツだな」
「あははっ! あんたもね」
姫菜は黒蝶とだんだんと、打ち解けてきて赤い綺麗な夕日を見ていたら、
自分のことを聞いて欲しくなった。
「黒蝶……あたしが人を殺したって言ったら、どうする?」
「それって、どういうことだよ?」
黒蝶は少し驚いたが、冷静に聞いている。
「あたしは子供の頃、家族そろって行った水族館の帰りに車に諸突されたの。
パパとママは、とっさにあたしとアヤ姉の上におおいかぶさって、守ってくれた。
でも、アヤ姉は助かったけど。あたしは瀕死であたしを生かすためにママは、自分とパパの生命力を魔力で全部くれて。そのまま、二人は亡くなってしまったの」
「だからママとパパは、あたしが殺したようなものなんだ!」
「あたしのこの髪と目の色は、血の色。一生かけても、罪は消えない……
これからも、重い十字架を背負ってあたしは生きてく」
「ねえ、黒蝶……あたしは、生きてていいのかな?」
姫菜は黒蝶を切なげに見つめた。
「朱井……お前」
黒蝶もまた、胸が締め付けられるような思いで、姫菜を見つめた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お読みくださり、ありがとうございます。
次回で最終話です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます