エルフ姉さんの東京生活
義一どん
第1話 時田 世平
その写真を見て参列者の多くは、とても良い笑顔だと思うとともに、遺族への同情の気持ちが高まった。
写真は時田 世平(よへい)享年16歳、黒縁のメガネをかけた大人しく真面目そうな高校生。笑顔の理由は、念願の原付バイクを手に入れた喜びのためだった。
葬儀会場の前方では、父親が5.歳の妹と手をつなぎ、そして母親は乳児を抱きかかえながら参列者にお辞儀をしている。
参列者の女性が二人小声で話している。
「やっぱりバイクって怖いわね。」
「結局、遺体は見つからなかったそうよ。」
「じゃあ棺桶の中は空っぽ?」
「いえ、見つかったのは、ヘルメットとメガネだけで、それが入っているんだって。」
「なんか辛いわね。」
突然妹が大きな声で、「お兄ちゃんはどこへ行ったの?」と父親に尋ねる。
父親は一瞬考えて、
「世平は・・・お兄ちゃんはね、違う世界に行ってしまったのだよ。」と優しい声で、そして自分自身を納得させるように答えた。
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