お金が存在しない世界でカイトは泥棒になる!!

難波とまと

第1話 ここは、お金自体が存在しない!

『ここは、どこ?』


『たしか…呑みに出て…、酔って歩いていたような、どこかで花の香りがしたような…、香水か?、どうもよく覚えてないな。』


気づいたらカイトは公園のベンチに座っていた。見覚えがあるようで、どこかが違う。そんな印象の公園…



『とりあえず家に帰るか。その前に喉が乾いたな、ジュースでも買うか…、あれ?財布がない、げっ、すられたか!!』


どうしたものか…


『自動販売機の下に硬貨とか落ちてないかな』


自動販売機の周りを探すが、そうそう落ちているわけもなく、ふと、しゃがんだ姿勢から自動販売機を見上げる。



『あれ?この自動販売機、変だ!』


『お金を入れるところがない!!』


すると、2人の小学生がやってきてお金を入れずに自動販売機のボタンを押し、ジュースを持っていった。


『!!!!』


『なんだ?無料なのか?』


恐る恐るボタンを押すと、

「ガタン」

ジュースが出てきた。



『無料?!、どうなっているんだ?、誰かに見られていてモラルのテストをされているのか?』


『しまった。自動販売機の下をゴソゴソしてるのを見られていたかも…、いや、今更考えても仕方がない。』


1本のジュースを飲みながら、しれっと何食わぬ顔で去ることにした。



「おかしい。何かが変だ」

チェーン店のハンバーガーショップを見ながらつぶやいた。ハンバーガーを買うときも、お金を払っていない。カードやスマホでの決済でもない…。


『これは夢か??』


雑貨店、洋服店など見てまわるが、どこのお店でもの工程がない。


『駅もか!!、乗車券はないのか?』


『まさか、身体にチップ?、監視カメラでモニタリングされていて後で精算されるのか?』



いろいろ考えるが何か違う気もする。よく見ていると、お金を支払っていないからなのか、しっかりお礼を言っている…、なんと、駅でもだ。


それどころか、お客さんどおしで挨拶、お礼を言っているのもよく見る。始めは知り合いかと思っていたが、どうも違う。そこにの雰囲気がある。



なのか?』


一方で、礼儀正しくない人を見かけることもある。全員というわけでもなさそうだ。


『さっき自動販売機でで手に入れたジュースのことが気になっている。自動販売機にお礼をしたほうがよかったかも…。いや、そうじゃない。無料のわけを調べないと後で何らかの請求が来るんじゃないか。』


観察を続けるが何にも解らない。人混みの中、呆然とたたずんでいると雑踏に紛れて気になる言葉が聞こえてきた。



「昨日凄く感謝されたから、今日は時間が長いんだよねー」

「さっき、妹と喧嘩しちゃった。二人して明日は大人しく短い時間を楽しむわー」

「明日はやることがいっぱい。時間増やさないと回んない。困っている人いないかな」

「あっちで時間ないって文句いってた奴、昨日も言ってたよ。どんどん時間短くなるの、わかってないんか?」



『!!!!』


『なんだ?』


『時間が増えたり、減ったりするのか?』


どうやら、この世界では通貨が時間のようだ。増やすには、時間を大切にすることか?



『…』


『おもしろい!!、この世界、気に入った!』


『良いことをしても悪いことをしても、何をしても時間が24時間って腑に落ちなかったんだ。良いことをしてくれる人の時間が長くなると世の中良くなるんじゃないかなって。時間を奪う人は時間が短くならないかなって思ってたんだ』


やる気が出たところで、まず、一番気になっていることは…


『腹ごしらえ!』



…つづく

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