第24話 リリア代行
試験の結果だが、リリアは学年でも上位だった。記憶する――というか記録する系と計算する系の問題は得意だが、自分で考える系の問題はまだまだ苦手なようだ。
成生はリリアに届かないまでも、クラスでは高め。集中は出来なかった勉強の内容がおぼろげでも頭の中に有ったおかげか、意外と問題が解けていた。
そして
無事、試験を乗り越えた三人。
そんな週末金曜日のことだった。
「リリアでもいたらなぁ……」
成生は自分の部屋で寝っ転がって、天井を眺めながらつぶやく。
また一人になってしまったのだ。
リリアはメンテナンスということで、
一人になって、リリアの存在感の大きさを知ってしまった。いつもそばにいる人がいないだけで、こんなに寂しいとは……。
もう夜で、外は雨。
闇夜とシンとした部屋が、寂しさを加速させていく。
「何して過ごそうか」
一人なので自由になんでも出来る週末のはず。だが、何をするか思い付かない。
「静かだなぁ……」
いつもは、そばにいるリリアが疑問を投げかけてくるのに……。
と思っていると、突然スマホから着信音が鳴り響いた。
相手は海陽だった。
「どうしたの? 海陽さん」
『あー、ナリオくん? リリアどうしてる? 連絡がつかないんだけど』
「リリアさんなら
『え? リリア、病気かなんか?』
「いや、身体の調子がおかしくないかの検査だよ」
全く嘘は言ってない。
『じゃあ、今はナリオくん一人?』
「そうだよ」
『さびしくない?』
「ちょうど、リリアがいないと寂しいな、と思ってたところ」
『いつ帰ってくるの?』
「明後日の夕方ぐらい、かな?」
『…………じゃあ、わたしがリリアの代わりにいてあげよっか? この前のテストのお礼もかねて』
「――――え?」
成生は一瞬、思考が停止した。
何を言ってるんだと思った。
『少し待っててね。すぐそっちに行くから』
「え、ちょ、海陽さん!? なに? どうするの?」
通話は切れていた。成生の叫びは、海陽の耳に届いていない。
海陽のことだ。何も考えずに「行く」と言い出したのだろう。テスト勉強のお礼どうしようと思ってるところに今回の事態で「ちょうどいい!」とでも直感で思ったのだろう。
海陽が自分で来ると言ったのだ。
(俺は悪くない!)
成生は自分に言い聞かせるように、何度も心の中で繰り返した。
一時間後。
元口家のインターホンが鳴る。思ったよりも早かった。
出ると、少し大きめなバッグを肩に担いだ海陽が、息を切らせて立っていた。
「はぁ……はぁ……この前来たときの風景思い出しながら歩いてきたけど、ちょっと迷っちゃった……。ごめんね」
息も絶え絶えに謝りながら傘を畳む海陽。寂しがってるから早く行かなきゃ! とでも思っていたのだろう。この息の切れ方、本当に歩いてきたかどうかは怪しい。
「バッグ、持ってあげるよ」
そのバッグは小さな海陽には大きすぎて、重そうに見えた。
「ありがとう」
「……」
海陽からバッグを受け取った成生は、ショルダーストラップを握った瞬間、黙ったまま動かなくなってしまった。
「……ナリオくん?」
成生の中で、モヤモヤと湧き上がる感情が有った。それはもう、抑えることが出来そうもない。
成生はバッグのショルダーストラップを自分の肩にかけると、海陽の肩を手でつかんだ。
「ナリオくん? どうしたの?」
「……海陽さん、俺もうガマン出来ない」
成生はその一言を強く発した後、海陽の腕をつかんで家の中に引き入れた。
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