第15話 大きなリリアと小さな海陽
ある日、成生とリリアと
すぐ終わるだろうと思い、成生と海陽は少し離れた場所でリリアを待つことにした。
「ねぇ、ナリオくん」
暇なのか、海陽が話し出した。
「リリアが転校してきた時からずっと思ってたんだけど……リリアっておっきいよね?」
おっきい!!
大きい。
そう。リリアの大きい部分って言ったら、そりゃあアレしかないだろう。
それは出会った時から成生も思っていた。
ラボの老人は「重さをごまかすためにちょっと肉付きのいい身体になっている」と言っていたが、その部分は肉付きがよすぎた。
いやぁ、ふとももとかも肉肉したむちむちさだとは思うけど、その部分はまさに超高校級だ。
あれは間違いなく、開発者の趣味だと思う。
それでいて、凄く柔らかいのである! そこは開発者のこだわりだろう。
ありがとう、開発者の人! 初日、背中で感じ取ったあの感触は忘れないよ!
「わたし、ちっちゃいから、いいなぁって思う」
ちっちゃい?
成生は海陽にさとられないよう、横目でそっと見てみる。
――言うほど、小さくはないと思う。
目の端に入ったそれは、思ってたよりも大きい気がした。
リリアと比べると……そりゃあ小さいが、比較する対象が間違っている。県内で一番高い
決して小さいとは言えないが、大きいとも言えないほどよい大きさぐらいだろう。
ハッキリ見て確かめたいが、さすがにそれは怒られそうな予感しかしないし、ただのヘンタイだ。
見てみたいけど!
「うん。小さくはないと思うよ?」
成生は冷静かつ素直に感想を述べてみた。
すると、
「そう? わたし、クラスじゃちっちゃい方だよ?」
なんて海陽は言う。
なんとぉ!?
衝撃的な発言すぎる。
うちのクラス、そんなことになってたのか! 海陽のあれで小さい方だなんて!
今年のこの学校の新入生は凄いことになってんな!
今まであまり意識はしてこなかったが、今後は意識してクラスの女の子を見てしまいそうだ。
これはいけませんなぁ。
それにしても、海陽はこんなところでなんて話をしているんだ。
この前、リリアの『人間はえっちなことを考える』なんてメモを書いているのを止めたが、今まさに考えているじゃあないか!
でも、リリアにはこっちの世界に来て欲しくない気持ちもある。清純という言葉が似合う子であって欲しい。
別に海陽が清純じゃないとか言いたい訳じゃあないが。
いや、リリアよりも更に付き合いが短いから、海陽が実際清純派なのかどうかは分からないけども。
少なくとも、そういう話を全く受け付けないタイプではないと思う。それはいいんだか悪いんだか分からないが、うっかりそういう話になって軽蔑の目で見てくることは無いだろう。
――まだまだ分からないことだらけだな、海陽に関しては。そもそも、リリアも分からないことが多いのに。
海陽のこと、もっと知りたいと思う。今後のためにも。
「わたしも、リリアぐらいあったら世界かわってたかなぁ……」
海陽がリリアの方を見ながらつぶやく。
海陽の小さなボディにリリアの大きなサイズ――アンバランス過ぎやしませんかね?
リリアでも服で困っているのに、小さい海陽は更に困ったことになりそうだ。
でも、そういうのをちょっと見てみたい気もするのは、ヘンタイ的思考なのだろうか? いや、これは好奇心だ。
それよりも今、顔が緩んでないだろうか。少し気になる。
「ねえ、ナリオくんは小さい女の子、どう思う?」
海陽は成生を見上げて訊いてきた。
ストレートに訊いてきたなぁ、おい。回答に困る質問を。
だが海陽のそれは小さい、とは思えないんだよなぁ。普通だと思う。海陽が小柄だから、少し大きめに見えるのかもしれない。
でも、海陽は小さいと思っている。
うーん……ヘタな回答は出来ないぞ?
「そういうのが刺さってこだわる人もいるけど、あんまり気にしなくていいんじゃないかな?」
「そうなんだ。でも、背が小さいのにこだわる人って、どんな人なんだろう」
「背ぇ?」
「背だよ?」
成生は横に立つ海陽を見下ろした。
確かに、背だったら海陽は小さい。150cmぐらいで、クラスの中でも小さい方だ。
そして、リリアは逆に大きい。というか、高い。クラスでも上から数えた方が早い。
いや普通、背なら『高い』とか言わない? 今みたいに。
大きいっていうから、勘違いしちゃってたよ、全く。
ああ、でもバレなくてよかった。
「え? ベツのことだと思ってた? なんだと思ってたの?」
海陽はその大きな目で、成生の目をジッと見てきた。
うっ……。目力が強すぎて圧が凄い。
本当のこと、言える訳ないじゃないか。言ったらはたかれるのは間違いない。はたかれるだけで済むかな?
ここはごまかすことにしよう。
リリアが大きくて、海陽が小さいもの……。
ふとももとか、お尻以外で……。
なんだ? 考えろ……考えろ……。
「――――器?」
「わたし、ちっちゃくないよっ!!」
結局、腕を思いっきりはたかれた。
やっぱり小さいじゃないか、器。
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