恋は濡れた子猫のように

 私の友人が失恋した。

「予兆はあったのよね」

 夜の街を窓辺で眺めながら友人はぽつりとつぶやいた。

「いつも使っている香水がね、気分じゃなくなったのよ。ある朝ふと、突然に」

 そう言って寂しそうに笑う。

 まるで雨に濡れた子猫みたいだ。

 寂しくてぶるぶると震えている。

 見かねた私はいれたてのホットコーヒーを差し出して、彼女の横に座った。

「聞いてあげる」

「ありがとう」とコーヒーを受け取って、彼女はゆっくりと男との過去を語った。

 話しているうちに涙が頬をつたい嗚咽がまじる。

 「なんでこうなったんだろう」と小首を傾げて涙を流す彼女はとても妖艶で、とても儚げだった。

 女は孤独や悲しみにひたっている時が、一番女らしいと私は思った。

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