キミのとなりを歩きたい

 もうすぐ文化祭だ。

 雨が止んだというのでクラスメイトのヤツラは教室の片隅で暇を持て余していた彼に文化祭の買い出しを押し付けた。

 ブツクサと文句を言いながら彼は校門を出る。

 あ、待って。

 私は彼を追いかける。

 校門を出たところでやっと彼に追いついた。

「私も行く」

「そうか」

 雨上がりの道を二人してしばらく進む。

 長い沈黙が続いた。

「……楽しそうだな」

 さも不思議そうに彼は問う。

「そう?気のせいよ」

 君が横にいるからなんて言えない。

 にやけて赤くなった顔を彼に見られたくなくて、ぷいっとそっぽを向いた。

 羞恥心で顔が焦げるかと思った。

 文化祭では君の顔をしっかりと見れるようになりたい。

 歩幅の違う足で歩きながら私はそう決心する。

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